伝説の「10・19」を振り返る ダブルヘッダーで生まれた死闘と残酷な結末

中日から金銭トレードで獲得した最強助っ人ブライアント

 当時の制度では1軍に登録できる外国籍選手の数が最大でも2名までとなっており、中日は同年の優勝にも貢献した郭源治とゲーリー・レーシッチという優秀な投打の助っ人を擁していた。そのため、ブライアントは「第3の外国人」という扱いにとどまっており、1軍での出場機会は得られないままだった。

 仮にこのままの状況が続いていれば、「在籍1年、1軍出場なし」という記録だけを残して日本を去っていた可能性も低くはなかったブライアントだが、近鉄への移籍が本人にとっても、そしてチームにとっても大きな転換点となる。

 6月28日に金銭トレードで移籍が成立すると、ブライアントは近鉄での74試合で34本塁打と驚異的なペースで本塁打を量産し、秘められていたその実力を誇示。まさに「救世主」というべき大活躍を見せ、デービスの穴を埋めてみせた。

 デービスが逮捕された時点では5ゲーム差をつけられていたチームも、王者西武を相手にシーズン終盤まで食い下がっていく。9月16日からの8連勝で一気にゲーム差を詰め、10月4日にはついに首位浮上を果たして「優勝」の2文字がはっきりと視界に入るところまで来た。

 だが、その後は再び西武に首位を明け渡し、近鉄が優勝を果たすためには最後の対ロッテ3連戦での全勝が必須、1つの引き分けすら許されないという難しい状況に置かれることに。3連戦を迎える前に西武は全日程を終了しており、ペナントの行方は文字通り近鉄ナインの手に委ねられる形となっていた。

 近鉄が前日に行われたロッテ戦で12対2の大勝を飾ったことで、10月19日に行われるダブルヘッダーは近鉄が連勝すれば近鉄の優勝、どちらか1試合でも引き分け以下に終われば西武の優勝という極限の状態で行われることに。シーズンの全てが懸かった大一番は、あまりにも濃密で、あまりにも残酷な……まさに、プロ野球史上に残る死闘となった。

現役引退を決めていた梨田が執念の一打を放ち勝ち越し

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