伝説の「10・19」を振り返る ダブルヘッダーで生まれた死闘と残酷な結末

現役引退を決めていた梨田が執念の一打を放ち勝ち越し

 第1戦では初回に愛甲猛の2ランが飛び出し、近鉄に対して8連敗中だったロッテが優位に試合を進めていく。近鉄も5回に鈴木貴久のソロで1点を返したものの、ロッテは7回に1点を追加して再び2点差とする。近鉄は8回を迎えた時点で2点のビハインド。当時は「ダブルヘッダーの第1試合では延長が行われない」という規定が設けられていたため、勝ち越せなければV逸が決定する。近鉄にとってはまさに土壇場というべき状況だった。

 しかし、ここから猛牛打線がこのシーズンの集大成ともいえる粘りを見せる。8回に1死一、二塁から村上隆行が2点適時二塁打を放って3-3の同点に追いつくと、9回にも1死二塁と得点のチャンスを作る。ここで鈴木がライト前ヒットを放つが、勝ち越しを狙った2塁走者は三本間で走塁死。9回2死二塁、あとアウト1つで優勝の可能性が完全消滅する状況だった。

 ここで、仰木監督は近鉄一筋17年目の大ベテラン、梨田昌孝を代打に送り込む。リーグを代表する名捕手として鳴らした梨田も年齢からくる衰えには勝てず、35歳を迎えたこのシーズン限りでの現役引退を決めていた。

 後に近鉄バファローズ最後の監督となる男がロッテのリリーフエース、牛島和彦から放った執念の一打は、センター前にポトリと落ちる起死回生の勝ち越し適時打に。生還した二塁走者の鈴木はコーチの中西太と抱き合い、大男2人は感極まってグラウンドを転がり回りながら喜び合った。

 この試合で初めてリードを奪った近鉄は、9回の途中から抑えの吉井理人に替えて、エースの阿波野秀幸をマウンドに送り込む。2日前の阪急戦で8回2失点完投の熱投を見せていた阿波野は疲れもあってか2死満塁の大ピンチを招いたものの、ここで打席に入った森田芳彦を三振に斬って取り、虎の子の1点を守り抜いてチームの希望をつないだ。

23分後に行われた第2戦は非情な結果に……

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