通算823勝の名将が“台湾の大王”王柏融を語る 「必ず新しい環境に適応できる」
投手力向上につながる交流試合
洪監督はLamigoの監督としても台湾代表の監督としても、日本のチームとの対戦が豊富で、今年も2月に千葉ロッテ、3月には北海道日本ハムとも対戦している。「日本のチームは野球のさまざまな技術面において、台湾に比べて細やか。台湾のチームにとっては試合を通じた交流を続けることで、何かしらの成長につながる」と、洪監督は交流試合に意義を見出している。
CPBLにおいては投手の育成に課題があるとされており、洪監督もそれを認める。「台湾では高校卒業後に多くの優れた投手が海外へ行ってしまい、その結果CPBLの台湾投手の実力は抜きん出たレベルにまで達しない」(洪監督)ことから、レベルの高い投手たちと対戦できる国際試合は貴重な成長機会になるという。
ただ、その一方で、CPBLは打撃力が高い選手が多く、洪監督の下からも数々の優れた選手が育っている。その筆頭が「大王」こと王柏融だ。若きスラッガーを入団以来指導してきた名将は、王柏融を技術面はもちろん「グラウンド内外において礼儀正しく、立ち振る舞いもきちんとしている」と人間性も高く評価し、「グラウンド上においても、グラウンド外でも、めったに『疲れた』と口にしない」と肉体的、精神的のタフさも称賛している。
その「大王」も、今年2018年はリーグ4位の打率.351。安打数はリーグ3位の159本、打点はリーグ2位の84打点ではあるものの、一昨年・昨年とシーズン打率4割、そして昨年には3冠王を獲得した実績からすると、「成績を落とした」と言える。
この原因を洪監督は「一気に知名度が高まったこととも関係がある」と分析する。今年はNPBの各球団だけでなく、MLBからもスカウトが台湾屈指のスラッガーを視察に訪れ、強豪チームの中軸としてファンも活躍を期待した。その中で「とても責任感が強いがゆえ、知らず知らずのうちに(自分に)プレッシャーをかけ、スムーズなスイングができなくなってしまった」(洪監督)という。
自分自身への要求が非常に高い選手で、若くしてさまざまな打撃タイトルを獲得し、台湾メディアをして「次元の違う選手」と言わしめるとはいえ、まだ「大王」も25歳。さまざまな葛藤、苦悩の中でプレーしていたことだろう。
また洪監督は「守備、走塁も、欠点がないというわけではない」と課題を指摘する。「NPBでプレーすることになった場合、たくさんの優れた選手との競争が待っている。細かい部分一つ一つについて学び、強化していかなくてはならない」とさらなる向上を促す。
その一方で、「よりよいトレーニング環境の中に身をおけば、彼の性格から言っても、レベルを引き上げることは大きな問題にはならない」(洪監督)と、その底知れぬ伸びしろを見込む。そして「海外でプレーする機会が来たとしても、いいパフォーマンスを見せてくれると信じている。彼の自分自身への要求の高さ、物事に取り組む態度などを見ても、必ず新しい環境に適応できると思っている」と、今後のさらなる成長に太鼓判を押した。