チームOPSは12球団ワーストの貧打…データで今季を振り返る【オリックス編】

オリックスの各ポジションごとの得点力グラフ
オリックスの各ポジションごとの得点力グラフ

野手は吉田正のみプラス評価 投手陣は先発、救援とも大きくプラス

 次に、オリックスの各ポジションの得点力が両リーグ平均に比べてどれだけ優れているか(もしくは劣っているか)をグラフで示して見ました。そして、その弱点をドラフトでどのように補って見たのかを検証してみます。

 グラフは、野手はポジションごとのwRAA(平均的な打者が同じ打席数立った場合に比べて増やした得点を示す指標)、投手はRSAA(特定の投手が登板時に平均的な投手に比べてどの程度失点を防いでいるかを示す指標)を表しており、赤ならプラスで平均より高く、青ならマイナスで平均より低いことになります。

 攻撃では、レフト吉田正尚の貢献のみプラス評価です。吉田正は自身初のシーズン全試合出場を果たし、打率.321(リーグ4位)、本塁打26(リーグ7位)、OPS.956(リーグ3位)と一人気を吐き、6月からは4番に定着しました。また前述の通り、投手は先発、救援ともに大きなプラス評価となっています。

 ドラフトでは全ポジションマイナス評価となっている内野を埋めるべく、4人の内野手を指名しました。小園海斗はくじで外してしまいましたが、1位指名の太田椋は俊足強肩強打の遊撃手として高く評価されてきた逸材です。また太田椋の父は元プロ野球選手で、現在はオリックスで打撃投手を務める太田暁氏。父の投げる球を息子が打つという練習光景が見られる可能性もあるでしょう。

 投手は3人すべて社会人を指名しています。即戦力として期待の指名でしょう。というのも、今年の開幕投手を務め、RSAAが10でチーム1位とオリックス先発陣の核となっていた西勇輝がFA移籍する可能性が濃厚とされているからです。

 また、2014年のパ・リーグMVPで、2008年からオリックス先発投手陣の屋台骨となって活躍してきた金子千尋も、年俸の大幅ダウン提示を不服として球団に自由契約を申し入れました。確かに2015年以降の成績から判断すれば球団提示の金額は致し方ないにしても、これまでの球団に対する貢献を考慮しない交渉態度は、事実上の戦力外通告と言っても過言ではないでしょう。

 さらには、開幕は出遅れたものの、5番として最多出場の中島宏之にも大幅減額を提示したものの、こちらも自由契約で退団し、巨人への移籍が決まりました。FA宣言していた浅村栄斗がオリックスとの交渉に至らなかったのは、この件が影響したとの見方もあります。ついには、バファローズを応援してきたPontaカードのイメージキャラクター・ポンタもツイッターでFA宣言をする始末。

 現時点では、野手の大型補強が見受けられませんが、来季は、外野では22歳の宗佑磨や西村凌、内野では26歳の福田周平や19歳の廣澤伸哉といったプロスペクトの底上げに期待をかけることになるでしょう。

鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。

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