王貞治、小久保裕紀、中村紀洋… 名球会打者に聞く「投手大谷、自分ならこう打つ」
同じ直球待ちでもアプローチがまったく異なる小久保氏と中村氏
同じような真っ直ぐを待って対応するタイプでも異なったアプローチをするのは、小久保裕紀氏と中村紀洋氏の2人。
小久保氏はプロ通算2041安打413本塁打、1304打点。ダイエー、巨人、ソフトバンクで常に主軸をつとめたチャンスに強い強打者である
「真っ直ぐを待つしかないでしょうね。真っ直ぐのタイミングでスイングして、スプリットなどの変化球が来たら諦める。また真っ直ぐが来ても打ち損じてしまったら、そこで負けかな。真っ直ぐで振りに行って、空振りやファウルならごめんなさい。ともかく少ないチャンスしかないから、それをしっかりつかまないと結果は出せないでしょうね」
そしてNPB通算2101安打、404本塁打。近鉄、オリックス、中日、楽天、横浜、ドジャースでもプレーした経験を持つ中村紀洋氏。
「真っ直ぐを待つのは変わらない。僕の打撃スタイルならば、フォークボールが来てもボール球なら見送れると思う。だからとにかく真っ直ぐ一本にしぼって思い切って振る。しばくような気持ちで強くスイングして、結果がどうなってもそれはどうしようもない」
現役時代からフルスイングが代名詞だった中村氏。ボール球を見極める技術と自信があるからできることでもある。
「投打で主軸っていうのはやはりスゴイ。高校野球じゃないんだし、プロ、それもメジャーで実際にやっているんですから。もし日本代表にいたら、単純に投手、野手のどちらかで選手をもう1人多く連れて行けますからね。結果も出せるし、こういう選手がいると助かるだろうし、いてほしかったですね」
2013年~17年に侍ジャパン監督をつとめた小久保氏。投打のどちらも期待できる大谷の存在を、代表監督目線でも語ってくれた。
そして王会長が最後に語ってくれたのは、大谷が野球界の未来にもたらす影響について。
「どの競技でも海外でしっかり結果を出すのが一番大きい。これまで野手として十分な結果を残したのは松井秀喜とイチローくらい。やはりメジャーのレベルは高い。その中で(大谷は)投打で活躍してくれて、みんなに大きな勇気をくれるよね」
「また勇気だけでなく、スケール感あふれるプレースタイルは野球をやっている人たちのお手本になる。東京五輪もあるし、今後もこういう選手がどんどん出てきて欲しい。みんながスケールの大きい野球選手になって欲しい」
大谷のような現役選手だけでない。この日のように引退したOB選手の輝きはいつまでも色あせない。野球界、そしてスポーツ界の明るい未来がそこから繋がっていく。『プレイヤーズファースト』の本質がそこにあったのではとも感じさせるような素晴らしいイベントだった。名球会の果たす役割は、これから先も決して小さなものではない。
(山岡則夫 / Norio Yamaoka)
山岡則夫 プロフィール
1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。Ballpark Time!オフィシャルページ(http://www.ballparktime.com)にて取材日記を定期的に更新中。