「武者修行」の場、ウインターリーグ 台湾、豪州、北中米の違いとは?

台湾ではNPBの選手がサイン会を行うと大勢のファンが集まる【写真:広尾晃】
台湾ではNPBの選手がサイン会を行うと大勢のファンが集まる【写真:広尾晃】

ラテンアメリカ諸国ではスカウトも活発

 もともとラテンアメリカ諸国では、それぞれ球団があり夏季にプロ野球のリーグ戦が行われていた。しかしMLBの海外進出によって、ドミニカ共和国、プエルトリコ、ベネズエラのプロ野球リーグは消滅。メキシカン・リーグはMLB傘下の3Aを与えられている(キューバはアマチュアという前提で国内リーグが存続している)。

 本来はラテンアメリカ諸国のウインターリーグも育成目的だったが、各国のレギュラーシーズンのリーグが消滅したために、興行的な性格が強くなったのだ。MLBもラテンアメリカ諸国のウインターリーグを後援している。

 各国のウインターリーグには、MLBで活躍する選手たちが帰ってくる「故郷に錦」という意味合いもある。またMLBをFAになって移籍先が決まっていない選手にとっては、移籍先を見つける最大の機会でもある。彼らにとっては、ウインターリーグは真剣勝負そのものだ。中日の森繁和前監督はドミニカ共和国のウインターリーグに足を運び、現地で外国人選手を獲得していた。そうしたスカウティングも活発に行われている。

 アメリカの記録専門サイト、「Baseball Reference」は2015年から各選手のキャリアSTATSに、ウインターリーグの成績も加えるようになった。中には、ウインターリーグを中心に選手生活を続けている選手もいる。先日、ベネズエラで事故死した元横浜、ロッテのホセ・カスティーヨもここ2年はウインターリーグでのプレーがメインだった。カスティーヨのウインターリーグ出場試合数は13年、675試合にも及ぶ。

 また、西武ライオンズなどで活躍したアレックス・カブレラは2012年オフにソフトバンクを退団後はウインターリーグを中心にプレーし、44歳になった2017年も4試合に出場している。

 NPBの選手にとって、ウインターリーグは「武者修行の場」だと言える。球団に在籍しながら、世界の野球に触れるまたとない機会だ。2015年オフ、DeNAの筒香嘉智は、ドミニカ共和国のウインターリーグ球団であるレオネス・コル・エスコヒードでプレーした。成績は34打数7安打0本塁打、打率.206と振るわなかったが、ほとんどがメジャーリーガーという環境でプレーしたことが、翌2016年の本塁打王、打点王の獲得につながったという。

 こうした武者修行が、NPB選手にとって大きな刺激になるのは間違いない。ウインターリーグに挑戦する選手が、どんどん出てきてほしいものだ。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

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