平田は過疎化地域から甲子園へ…21世紀枠候補校、推薦理由は?
野球部目標は甲子園で校歌と地域活性化…野球部から生徒会長
日本高野連は14日、来春の第91回選抜高等学校野球大会の21世紀枠の候補校9校を発表した。21世紀枠は練習環境、地域貢献などが選考条件となり、各9地区から推薦される。そこで、ここでは推薦された9校の推薦理由などを紹介。今回は中国地区の平田高校だ。(主催者発表文より一部抜粋)
「自律・協同・創造」を校訓とした創立103年目の伝統ある学校。出雲市平田町は平成17年3月までは平田市であったが、平成の大合併により出雲市と合併した。旧平田市唯一の高校が平田高校で、地域の方々からは「おらが町にかけがえのない高校」として愛されている。合併後、旧平田市の人口は約4000人減少して25000人ほどになり、平田高校も1学年6学級から4学級と小規模になった。しかし部活動には90%以上の生徒が加入しており、柔道部と女子駅伝の陸上部は全国大会常連。さらに今年度は卓球部、JRC部、放送部、文芸部が全国大会に出場している。一方で、国公立大学には毎年40名前後が進学しており、野球部員からもほぼ毎年国公立大学に合格を果たしている。
「地域に信頼される魅力と活力のある学校づくり」を目指して地域のボランティア活動へ積極的に参加。さらに今年度からは地域活性化をテーマとして2年生全クラスと生徒会が平田商工会議所と協定を結び、「地域課題解決学習」に取り組んでいる。地元産のあずきを使ったスイーツを地元企業と共同開発したり、商店街での「リアル版人生ゲーム」といった地域活性化イベントにも企画段階から参加している。以前から野球部員が生徒会長や副会長を務めることが多く、こうした地域密着にリーダーとして取り組んでいる。また、生徒会の野球部員が全校生徒に対して校歌指導を行うことによって、大きな声で校歌を歌う生徒が増え、学校が明るい雰囲気になってきた。
野球部の活動目標は、「甲子園で皆と一緒に校歌を歌う」ことと、「平田地域の活性化に貢献する」こと。グラウンドはサッカー部、陸上部と共用のため、練習方法を工夫し、狭い場所でも実施可能な基本技術の習得と弱者が強者に勝つための戦術練習に力を入れている。
野球の特徴は「攻めの守備」。ボールを投げる(持つ)チームが防御するスポーツは野球以外にはないのではないかと捉え、守備は守るのではなく、攻めの配球・攻めの投球・攻めのポジショニング・攻めの組織的防御を考えて行う。こうした「攻めの守備」を体現できるようになった今年は、春季島根大会ベスト4。新チームでは島根大会準優勝で中国大会に出場した。島根大会5試合中4試合が2失点以内で、エースの防御率は0.55だった。準々決勝では守備時に自チームの球種を暗号で野手に伝えて、大胆なシフトを敷いて攻守を連発した。攻撃では積極的な走塁とバントによって得点する「協力野球」を徹底。島根大会決勝では先発したエースが利き腕の上腕二頭筋の炎症で1回途中で降板する窮地だったが、「協力野球」で9回表まで4点をリードした。
この他、子供たちの野球離れを食い止め、野球の先進地域を目指して町おこしをすべく、地元の幼稚園や保育園に働きかけて「高校野球200年構想リーディングプロジェクト」の柱である「普及活動」を積極的に行っている。部内には「普及班」があり、手作りバットや記念メダルなどの作成・活動内容の企画立案・役割分担を選手が主体的に行っている。昨年は平田地域と隣の斐川地域の全22幼稚園・保育園の年長児全員にチラシを配って希望者を募集し、体育館で野球体験教室を行ったり、4つのスポーツ少年団に在籍している全児童に対して実技講習会を実施した。今年度はこれらに加え、夜間保育の子供達への野球体験も実施するなど、毎月子供達に野球の楽しさを伝える活動を行っている。また、島根県高野連の普及委員でもある植田悟監督は2年前から「普及班」を中心とした実践をもとに「幼児向け野球体験会実施マニュアル」作りに取り組み、県内のみならず、鳥取、広島などの高校でも参考にされている。全国規模での普及活動の推進に大いに貢献している。
中国地区の選考会での審議では各5校の推薦項目に甲乙つけ難かったが、地区大会出場と部活動以外の活動の観点から平田と米子東の2校に絞られた。さらに両校の推薦項目を詳細に検討した結果、甲子園出場の経験がなく、過疎化が進む地域にあって積極的なボランティア活動で地域と強い繋がりを持って人々に愛されているおとや、生徒会役員として他の生徒をリードしていること、また子供達の野球離れを食い止め、幼稚園や保育園に働きかけで「野球の普及活動」を積極的に行っているなどの点から、平田を中国地区の推薦校とすることが決まった。
なお、同校の島根県推薦は3回目。2015年の第87回大会では中国地区の推薦を得て、21世紀枠候補となり、補欠1位だった。
(松倉雄太 / Yuta Matsukura)