「ベースボール」ではなく「野球」を――シンガポール代表日本人監督が伝える思い

「ベースボール」ではなく「野球」が持つ魅力とは

 取材当日は、香港で12月14日から17日まで世界6の国と地域のナショナルチームやクラブチームが集まって開催された「WBSC香港国際ベースボールオープン2018」の真っ最中。シンガポールはこの大会に高校生を中心としたナショナルチームで参加していた。学業や兵役が優先される事情もあり、ベストメンバーが揃わなかったものの、内田氏によれば過去にも例を見ない20人の選手が集まったという。

 日本とは文化や社会背景が違う国で、野球を指導するのは一筋縄ではいかない。その中で指導するにあたり大切にしていることを教えてくれた。

「世界には『野球』と『ベースボール』がありますが、私は『野球』を教えています。ベースボールは個人競技になりがちですが、野球はチームワークはもちろん、プレー以外にも道具や礼儀を大切にします。また、キャッチボールでは相手が捕りやすいように胸元に投げるという『心遣い』もできます」

 野球では勝利に向かってチーム全体が結束し、選手同士が助け合いながらプレーする。もちろん、選手である以上、試合で勝つことも大切だが、内田氏は野球を通じて多くのことを学んでほしいと願っており、「選手個々がリーダーになってほしい」との想いがある。

 試合前練習では、他の参加チームはキャッチボールや軽めの練習でアップを済ませていたが、シンガポールはこれらの練習に加えてシートノックを行っていた。日本の試合では見慣れた光景ではあるが海外では珍しい。だが、普段は野球場がない環境で練習している選手たちにとっては貴重な機会となった。試合に入るとベンチ内では選手たちが声を出して応援、守備中では声を出してチームを盛り立てるなど、「日本野球」の片鱗が確かに存在していた。

 内田氏の教えはチーム内に深く浸透しており、最年長でキャプテンを務めるワン・ガンイー外野手は「内田さんはいつでもポジティブな方で、どんな時でも諦めないことを教えてくれます」と話す。実際、試合では点差が開いて劣勢になってもつないで得点チャンスをつくり、点差を詰める粘りを見せるなど健闘。大会では準優勝(ナショナルチーム3か国参加)という結果を残した。

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