「ベースボール」ではなく「野球」を――シンガポール代表日本人監督が伝える思い

沖縄県高野連の協力の下、沖縄キャンプを実施

 香港での大会前、シンガポールチームは沖縄キャンプを実施し、沖縄県内の高校と練習や試合を重ねて準備をしたという。「沖縄の高野連がシンガポールチームが来るということで大歓迎してくれました」と内田氏。野球を通じての国際交流は、シンガポール野球の原点ともつながる。

 取材中、内田氏はある名刺を見せてくれた。そこにはシンガポール代表の選手たち1人1人の名前と「インコース」や「キャッチボール」といった野球用語、「やればできるぞ」などの応援メッセージが、日本語と英語で書かれていた。沖縄県の高野連からプレゼントされたものだそうで、この名刺を手にしながら内田氏は満面の笑みを浮かべて感謝の気持ちを語った。

 シンガポール政府からよりよい支援を受けるためには結果を残さなければならない。今回参加していた香港での国際大会では「最低でもメダルを取る(3位以内)」を目標にしており、見事にこれを達成。だが、そこで満足することなく、すでにシンガポールチームは次を見据えている。次なる目標とは……。「東南アジアのスポーツの祭典である『SEA GAMES』に出たい。そのためにはインドネシアやタイ、フィリピンに勝たなければなりません」と内田氏は語る。

「SEA GAMES」と、2019年11月30日からフィリピンを舞台に行われる大会で、東南アジアの11か国が集まり、野球をはじめ56種目の競技を行う予定になっている。野球競技において内田氏がライバルに挙げた3か国は、同地域でトップクラスの実力を持ち、シンガポール同様に日本人指導者が育成と発展に深く関わっているという。

 こうして遠く離れた東南アジアの地にも、日本の野球が根付いている。プレーを通じて人間形成をしながらも試合でも結果を出すという好サイクルは、今後も続いていくことだろう。さらなるシンガポール野球の発展に期待したい。

(豊川遼 / Ryo Toyokawa)

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