「日本の常識が非常識」―“松坂世代”の久保康友が米独立Lに挑んだ理由(下)

「独立リーグの環境はこういうものだ」と開き直れば、何でも受け入れられる

 ご存知の通り、独立リーグの環境は決して恵まれてはいない。遠征の移動はほとんどがバスだが、国土の広いアメリカでは舗装されていない道を数時間……最長で20時間もかけて走ることも多い。NPBでは雨で試合が中止になれば予備日に振り替えられるが、米独立リーグはダブルヘッダーが普通。日本のプロ野球の最高峰まで登りつめた久保からすれば相当堪える環境かと思いきや、実はむしろワクワクしていたという。

「環境のことは日本にいる時にテレビなどで見たことはあるし、ある程度想定はしていました。というか、これが普通だと思えば気になりません。移動の長さより、バスのトイレの臭いを消す芳香剤の臭いがキツくて頭が痛くなったことの方が辛かったです(笑)」

 もともと、新しい環境になじむのには時間がかかる方で、デリケートな性格でもある。だが、それを分かった上で敢えて知らない土地に飛び込んで免疫をつけたいという目的もあった。最初に所属したレイルキャッツではアパートを若いチームメートとシェアし共同生活を送ってきたが、この生活をハングリーだと言うとしたら“日本目線”だと久保は言う。

「現地ではこれが当たり前。むしろ日本は2軍でも寮はきれいだし、長距離移動がバスであってもここまでの条件ではないでしょう。アメリカではこれが日常なので、こういう生活なんだと思えばそれまでです。自分はまず、この中で順応していくことだけを考えました」

 こんなこともあった。試合前に球場周りをランニングしようとしたら、チームメートから「お前はクレイジーだ」と言われた。最初は「アメリカ人はここまで練習しないのに何でそんな風に言われないといけないのか」と不信に思ったが、アメリカではざっくりと「この街は治安が悪い」と言っても、国土全体で治安の悪い地域、そうでない地域が交互に点在し、球場付近は外に出るだけで銃口を向けられることも少なくない地域だった。そのため練習は球場内のみ。移動は車が基本で、外を1人で歩くことはご法度とされている。だが、これを「環境が劣悪」と思うのではなく「独立リーグの環境はこういうものだ」と開き直れば、何でも受け入れられると思っている。

「野球界という視野の狭いところにずっといた」

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