痛かった左肘は「傷一つない」 楽天ドラ8から消えた不安「体って不思議」
ドラフト8位の鈴木は全メニュー消化「今は気にせず、投げられています」
9日に楽天生命パークの室内練習場で始まった楽天の新人合同自主トレ。ドラフト8位の鈴木翔天投手(富士大)は不安を抱えていた左肘が万全であることを明かし、キャッチボールやトレーニングなど全メニューをこなしている。
平石洋介監督やコーチ陣などが見守る中、初日はドラフト1位の辰己涼介外野手ら同期たちと軽快に体を動かした。キャッチボールではボールの回転と投げ終わりを意識したと言い、「もう少し、緊張するかなと思ったんですけど、結構、気楽に楽しくできました」と晴れやかな表情で振り返った。
もう、不安はない。北東北大学リーグの富士大では2年時に左肩と肘を痛め、昨春も左肘痛で登板できなかった。「去年は痛くて、だましだましやっていた」。秋季リーグ戦も5試合に登板したものの、力を出し切れたとは言えない。それでも、楽天はその素材を評価して指名。そして、入団会見を前に行われたメディカルチェックで「傷一つ付いていない」との診断を受け、「そう言われてから痛みが消えました(笑)」と鈴木。「気持ちだったんですかね。もう大丈夫なんだということで、腕が振れるようになりました。不思議ですね、体って。今は気にせず、投げられています」と不安を解消し、プロのスタートを切った。
怪我をしないことに越したことはない。だが、鈴木にはその経験で得たものもある。怪我をしていた2年時、鈴木はケアやストレッチに力を入れるようになった。フォームを見直したり、増量したりと「足りないものをその1年に詰め込んだ」という。その成果は3年生だった2017年シーズンに表れた。春季リーグ戦では4試合に登板。大学選手権では初戦の福岡大戦で1点リードの4回から登板し、チームの逆転勝利につながる投球を披露した。「自分のターニングポイントっていうんですかね、人生の」と言うほど、投手としての大きな自信を手にした一戦につながった。
心のつっかえが取れた状態でプロの第一歩を踏み出し、初日の練習の合間には平石監督や首脳陣、球団スタッフにもあいさつをして周った。「これから1か月間は名前を覚えることで必死になるんじゃないかなと思います」と頭をかいた鈴木。午前中のメニューを終えると、同期たちが室内練習場から引き上げる中、再び平石監督の元へ。富士大で17年までコーチだった奥玉真大さんがPL学園の出身で、平石監督が後輩にあたる。「平石監督と奥玉さんがご飯に行ったりしている仲だそうで、『よろしく伝えておいてくれ』と言われたので」と個別のあいさつも済ませた。
約4時間の練習に汗を流し、「これから練習もきつくなってくると思うんですけど、しっかりケアをして、自分のペースで怪我をせずに乗り越えたいなと思います」と鈴木。キャンプの1軍帯同や開幕1軍を目標としながらも、「そこばかりを追い求めすぎて怪我をしたら元も子もないので」とマイペースを強調する。大学時代の苦い経験を糧にプロで飛躍する準備を続けていく。
(高橋昌江 / Masae Takahashi)