V3広島の未来を左右する存在!? 高卒ルーキー内野手たちへの高い期待値

林は長打、羽月はスピードに注目

「長打を打てるのがアピールポイント。本塁打は理想の形。それを打てるのは一番良いこと」と話す林は名門・智弁和歌山高で1年夏からベンチ入りし、春夏3度の甲子園出場。高校通算49本塁打。金属バットとはいえ甲子園で逆方向へ2本塁打を放っている。182センチ、88キロと現時点でも恵まれた身体をしており、「3冠王をとりたい」というコメントからも志の高さが伺える。
 
 また、「トリプルスリーを目指したい。特に盗塁数は30ではなく、40、41と伸ばしていきたい」 と話すのは羽月。167センチ、70キロは新人選手の中でもひときわ小柄に見えるが、50メートル5秒7というスピードはすでに1軍クラス。ところが本人からトリプルスリーという言葉が出たのには驚かされた。「1軍昇格はやはり今年が良い。足で魅了できる選手になれれば」。17年夏の甲子園で2三塁打を放った足に新たなものを加える気持ちがあるのだろう。

 たまたまこの日、メニューに打撃練習は入っておらず、視察に訪れた3軍統括コーチの浅井樹は「今日、打撃はしないのか? なんだつまんない」と笑っていた。新人の打撃を見るのが楽しみでしょうがないようだ。

「もちろん映像では見ていますけど、現状の打撃を知っておきたい。林は大きく育ってほしい、松山竜平のようなイメージかな。羽月はやはりスピードが武器になるんじゃないかな。広島らしいタイプというか、うちの野球にマッチしそうなのでプロに慣れればチャンスも多いと思う」

「でもまだ高校生ですからね。気持ち的にも高まっているから、オーバーペースにならないようにこっちは気につけないといけない。小園ももちろんですが、どこまで伸びるのか楽しみでしょうがない」

 年明け早々、都内でおこなわれたNPB新人研修会に同行したカープ球団関係者は「まるで遠足や修学旅行ですよ。引率の先生の気分です。まぁ、まだ高校生ですからしょうがないですけど……。でも可愛いですよ(笑)」と思い出し笑いで語ってくれた。 

 強豪チームの新人、数年前までとは比較にならないほど注目度は高い。連日のようにメディアやファンからも声をかけられる。これまでの普段の生活では経験したことのないことだろう。だがこれからはこれが日常。自らを見失うことなく、真っ直ぐ、愚直に進んでいくこと。それこそが遠回りに見えながらの成功への近道、球団関係者の願いである。

 瀬戸内は冬でも日差しが眩しく、林と羽月の2人も大粒の汗を流していた。戦いの舞台は高校野球からプロへ変わるが、前を見据える表情は以前と変わらず、まるで季節外れのひまわりのように輝いて見えた。どこまで成長し、どんな選手になっていくのだろうか。

 大人のトビラを開けた夏の少年たちを、合宿所に対面する世界遺産・宮島が見守っている。熾烈な競争がいよいよスタートだ。

(山岡則夫 / Norio Yamaoka)

山岡則夫 プロフィール
 1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。Ballpark Time!オフィシャルページ(http://www.ballparktime.com)にて取材日記を定期的に更新中。

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