光泉の最速144キロ右腕、星稜奥川の“視野”に脱帽 「見破っていたみたいです」

練習試合に登板した光泉・吉田力聖(りき)【写真:沢井史】
練習試合に登板した光泉・吉田力聖(りき)【写真:沢井史】

10日に星稜と練習試合に登板した光泉の144キロ右腕・吉田力聖

 第91回選抜高校野球大会に出場する星稜が10日、金沢市内のグラウンドで光泉(滋賀)と練習試合を行った。この日、星稜の奥川と投げ合うことを何よりも楽しみにしていたのが光泉の最速144キロ右腕の吉田力聖(りき)だった。

 吉田は2年春からエース番号を背負い、昨秋の県大会でも好投を見せ、県内屈指の本格派右腕として密かに注目を集めている。昨年11月頃に星稜との練習試合が決まり、「今日(3月10日)を目標にしっかり練習してきました」と振り返った。

 秋まではストレートの最速は141キロだったが、この冬に計測するとスピードが3キロもアップしていた。トレーニングで下半身を鍛え、球にしっかり力が伝わるようになった証拠だろう。この日も力のあるストレートを武器に初回に巧打者・東海林航介(2年)を三振に仕留めるなど順調な滑り出しに見えた。

 だが、2回に先制を許し、3回に奥川、山瀬慎之助(2年)らの連打などで3点、4回にも東海林の二塁打などで2点を失うなど4回を投げ6失点。前日に星稜と同じくセンバツに出場する福知山成美(京都)を2回無失点に抑え「昨日、好投してくれたので何とか抑えてくれるかな、と思ったのですが、そうはいきませんでしたね。おそらく吉田はこれだけ点を取られたのは初めてじゃないでしょうか」と古沢和樹監督は吉田の威力のあるストレートをしっかり振り切っていた星稜打線に脱帽した。

 吉田は奥川のマウンドでの立ち姿などをすべて目に焼きつけた。「奥川君より自分が下ということは分かっているので、まず自分ができることをしっかりやって、吸収できることはしてこようと思いました。初回はストレート1本で抑えられたんですけれど、ストレートの伸びやキレ、どれを取ってもすごいピッチャーでした」

 試合後、星稜グラウンドのそばにある坂道で、1試合目を投げた両校の投手陣がダッシュなどのランニングで共に汗を流してコミュニケーションを取ったが、その際に奥川とこんなやり取りもあった。

「自分のピッチングで癖があることを教えてもらいました。グラブの位置や構えで球種が分かると。奥川君はそこを見破っていたみたいです」

 自分の欠点を指摘してもらったことは何よりありがたかった。最後はお互いが笑顔で言葉を交わし、グラウンドを後にした。「星稜打線は自分がコーナーにしっかり決めたと思った球でも、しっかりフルスイングしてくる。そのあたりはすごい。奥川君もそうですが、これだけのチームは滋賀にはいないので、とてもいい経験になりました」大敗したとはいえ、吉田にとってこの日のマウンドはこの上ない貴重なものとなったようだ。

(沢井史 / Fumi Sawai)

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