広陵に再び「4番・中村」 強打の主砲は甲子園にアーチを描けるか
広島・中村奨成の2学年下 憧れで打撃フォームも「自分には真似ができませんでした」
中国大会を制した広陵(広島)は名将・中井哲之監督のもと、春4度目の頂点を目指す。その打線の中心にいるのが、4番・右翼を任される中村颯大(ふうだい)外野手だ。第91回選抜高校野球大会(23日から12日間、甲子園)では注目の打者として視線を浴びることは間違いない。
中学時代(安佐ボーイズ)はボーイズの日本代表として世界大会3位を経験した。広陵に入学すると1年秋から4番を務め、積み重ねてきた本塁打数は20本。1年の夏、甲子園で大会新記録となる6本塁打を放った2年先輩の中村奨成(現広島)がクローズアップされた。当時、偉大な先輩のバッティングフォームを真似しようともしたが「自分には真似ができませんでした」と苦笑い。だが、チームでも群を抜く長打力と勝負強さで昨秋はチームトップの13打点をマークした。
「自分の持ち味は長打力。チャンスに回ってくるほど燃える方です。(昨秋は)野手の間に強い打球が飛んでいたとは思いますが、タイミングの取り方が遅くてピッチャーに合わせてしまうところがあって、どうしても打球が伸び上がっていました」。
冬場の練習では下半身をもっと粘り強く使うために、打撃フォームを探求。だが、軸足がなかなか安定しなかったため、走り込みとタイヤを引っ張るなどして下半身強化に努めた。打撃練習ではとにかく一球を無駄にしない。試合を想定しながら集中力を高め、しっかり振り切る。その繰り返しが功を奏し、日を追うごとにミスショットが減ってきた。
父・健太郎さんが広陵ファンだったこともあり、名門に憧れて山口から門をくぐった。「高校ではバッティングで勝負しようと思って、中学の時から一年間で360日くらいは自主練習でティーバッティングをやってきました」。その数は1日500球を超えることも。当時からしっかり振り切ることを実践して強い打球を打つコツを掴み、その自信が高校ですぐに生かされた。
昨秋は県大会で武田・谷岡、中国大会で創志学園・西、明治神宮大会で星稜・奥川と公式戦で150キロを超えるストレートを持つ好投手と対戦する機会が多かったが、最も目を奪われたのは奥川だった。「変化球のキレやストレートの伸びがすごくて、コントロールが良かった」。このレベルの投手を打てないと日本一はない。センバツでは奥川投手との再戦を熱望するが、その前にチームを勝たせる一打を打てる4番でありたいと思う。
「チームの流れを変えられる、そしてチャンスで打てるバッターが理想です」。3人の好投手が注目されるチームの中で、中村のひと振りにも目が離せない。
(沢井史 / Fumi Sawai)