全ては1枚のチラシから… 楽天移籍の熊原は故郷で躍動へ「特別な思いはある」

少年時代は仙台育成・佐藤由規、大学時代は岸孝之が憧れだった「一緒にやるのは不思議な感じ」

 高校時代、球速は140キロを超えたが、全国的には無名。甲子園出場もならず、不完全燃焼に終わった。約700年続く神社に生まれた宿命から、鹽竈神社の神職養成所へ行きかけたが、大学進学を希望。反対する両親を周囲が説得し、地元の仙台大に進んだ。178センチ、66キロで入部。細身の同じような体型で、高校時代は無名だが大学で花開いた、という点で目指したのは岸孝之投手(現楽天)や中日・浅尾拓也投手(現中日2軍投手コーチ)だった。

 その学生時代、155キロを投げること、仙台六大学リーグの王者・東北福祉大を倒すこと、そしてプロ入りすることを目標に掲げた。1年の冬に森本吉謙監督は熊原のストレートの質の変化を感じ取り、2年春のリーグ戦で開幕投手に指名した。その冬に左足を一塁側に引いてセットし、その足を三塁方向に投げ出すようにして高く上げてから投げる独特の投球フォームを体得した。

 ボールの強さが増し、変化球の精度も上がり、ピッチングが変わった3年春、仙台大の67季ぶりのリーグ優勝と初の大学選手権出場の原動力となった。さらに、大学日本代表、U21日本代表にも入り、プロの選手やコーチから多くを学び、力にした。そして、2015年のドラフト会議でDeNAから2位指名を受け、仙台大初、角田市出身としても初のプロ野球選手となった。

 DeNAでの3年は、「失敗したことの方が、僕の中ではすごく多い」と言った。投球フォームも変わった。だが、「その中で学んだこともある」と言い、「環境も変わりましたし、いいイメージを持ってもらえるように、同じ失敗を繰り返さないように横浜で学んだこと、得たことを発揮していきたいと思います」と前を見据える。

 特別な思いでクリムゾンレッドのユニホームに袖を通す。投手となるきっかけを作ってくれた由規は今季、楽天に加入。大学時代にその歩みを支えとした岸は2016年のオフにFAで楽天に移籍し、大黒柱となっている。チームメイトとなることに「2人とも、地元のスーパースター。憧れです。一緒に野球ができるというのは不思議な感じですね。学ぶことがたくさんあると思うので、吸収する姿勢を忘れず、自分に足りないもの見て学んだり、聞けたりしたら嬉しいです」と声を弾ませる。

 夢に向かって邁進していた2013年、大学2年の時には楽天が日本一になった。「僕が小学生の時に球団が創設され、大学生の時に日本シリーズで優勝して感動した。僕も感動をみんなに与えられる選手になりたいです」。楽天が誕生した時、1枚のチラシをきっかけに野球を始め、憧れの選手を目標に鍛錬してきた熊原。故郷の空気を吸い、輝きを取り戻す。

(高橋昌江 / Masae Takahashi)

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