三塁挑戦の日ハム浅間に重なる小笠原道大の姿 首脳陣が評価する「ガッツ」
初の開幕1軍で三塁手デビュー「彼にはホットコーナーにふさわしいガッツがある」
プロ5年目で初めて開幕1軍入りした日本ハムの浅間大基外野手が、三塁手デビューを飾った。
昨年11月の秋季キャンプで三塁の練習を始めてから5か月足らず。昨季までの野球人生では投手と外野手しかやったことがなかった22歳が、3月29日のオリックスとの開幕戦の先発オーダーに「1番・三塁」で名を連ねた。30日の第2戦にも「1番・三塁」で先発出場。4度の守備機会を無難にこなした。
守備の手応えについて本人に聞くと「まだまだ精度が低いですし、覚えていかなきゃいけないこともあります。練習でもゲームレベルのスピード感を意識してやらなくてはいけないですね。1回1回、一つずつ打球をさばくことで自信になっていくと思います」と初々しい答え。その表情は向上心に満ちていた。
打っては2試合で6打数1安打、送りバントを2つ決めた。打力を買われて高卒1年目から1軍で活躍した実績を持つ浅間からすれば、満足いく数字ではないだろう。だが、開幕シリーズ、しかも緊迫した試合展開の中で犠打を成功させたことは大きい。レギュラーをつかみかけている若手選手が、犠打失敗でつまずくケースは少なくないからだ。
開幕戦のバントは劇的勝利を呼び込んだ。延長10回無死二塁で初球失敗したものの、2球目に投前に決めた。ここで1死三塁の場面をつくったことが、2者連続申告敬遠から中田翔内野手のサヨナラ満塁弾につながった。
「何事も準備だと思うので、相手のことを考えて、体も心も準備をして、しっかりポジションをとれるように勝負していきたいです」と力を込めた浅間。17年オフの腰の手術を乗り越え、レギュラー奪取へ本気だ。
一方、初めての三塁守備を周囲はどう評価しているのだろうか。「期待以上に対応してくれている」と成長を認める緒方耕一守備チーフ兼内野守備走塁コーチが最も買っているのはボールを恐れない姿勢だという。「サードは野手で一番バッターと近いので、恐怖心をどう克服するかが問われる。彼にはホットコーナーにふさわしいガッツがある。ボールを怖がらないし、(バウンドが)合わなくても体で止めるガッツがある」と評価した。
ガッツという言葉を聞いて私の頭に浮かんだのは「ガッツ」の愛称で親しまれた小笠原道大中日2軍監督。北海道移転直後の日本ハムをけん引し、06年には本塁打と打点の2冠を獲得してチームを44年ぶりの日本一に導いた。準備を怠らずに努力し続け、捕手から一塁、そして三塁に挑戦して球界を代表する選手になった小笠原のように、飛躍してほしい。
(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)