決勝打を放ったヤクルト西浦の意地 打席で感じていた二重の“悔しさ”とは
目の前で二度、雄平が申告敬遠で歩かされる 1死満塁から決勝2点打
■ヤクルト 5-2 DeNA(2日・神宮)
ヤクルトの勝負を決めたのは、西浦の“意地”だった。
ヤクルト・原、DeNAルーキーの上茶谷による息詰まる投手戦から一転、試合が8回に動き出していた。同点に追いつき、なおも1死二、三塁で雄平がこの試合、2度目の申告敬遠で歩かされ、満塁となった。
目の前の打者が歩かされ、自分との勝負。6回の敬遠後は中飛に倒れていた。悔しさは本人にしかわからないだろう。
同じ思いは2度もしたくはない。1死満塁の絶好機でパットンのスライダーを迷わず叩いた。中越えの適時二塁打となり、二者が生還した。
燃える気持ちと冷静な気持ちで打席に入っていた。
「状況を理解して、自分に何ができるのか、そのことに集中して打席に入りました。内野も前でしたし、1球が勝負、1球で仕留める気持ちでした」
見事、決勝点となり、試合後はお立ち台でファンの歓声を浴びた。
西浦は前日まで、そんな歓声とはほど遠いところにいた。
3月29日、阪神との開幕戦(京セラ)。遊撃の開幕スタメンをつかめず、ベンチスタートだった。出場は途中からで空振り三振の1打席。スタメンは31日の開幕3戦目。結果は4打数ノーヒットだった。持ち前の勝負強さが影を潜めた。
「プロの世界なので、結果を残さないと試合に出られないのは当たり前です。次に出た時に結果を出して、取り返すという気持ちでした」
二重の悔しさが、この日の活躍の力になっていた。
青木の先制本塁打に、激走を見せた二塁打。バレンティンの同点打など、主軸の仕事ぶりは見事だった。一方で7回無失点の好投・原樹理、ダメ押し犠飛を放った上田ら若手、中堅の意地が見られるのも、首脳陣もファンもうれしい瞬間だ。
本拠地開幕戦勝利を導く大きな一打を放っても、西浦に慢心はない。次の一打を打つために、気持ちを切り替えて、次戦に向かう。
(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)