星稜奥川、最速150キロ完投で北信越王者も「もっとレベルアップしないと」
北信越大会決勝・敦賀気比戦で9回11K7安打1失点 右肩違和感を払拭
第140回春季北信越高校野球大会の決勝戦が4日、富山アルペンスタジアムで行われ、星稜が3-1で敦賀気比を下し、春は4年連続、3季連続北信越王者に輝いた。星稜の奥川恭伸(3年)、敦賀気比の笠島尚樹(2年)の両エースが先発。試合は投手戦となった。4回に敦賀気比の4番・木下元秀(3年)の適時打で均衡が破れたが、7回無死満塁から星稜の2番・有松和輝(3年)左越えへ走者一掃の逆転3点二塁打を放って逆転。奥川は9回11奪三振、7安打1失点で完投し、息詰まる接戦を制した。
普段は穏やかな表情で冷静に思いを述べるエースが、珍しく感情を込めた言葉を発した。「倍に返してやろうと思いました」。それは敦賀気比の4番・木下との対戦だ。2回の第1打席は147キロの直球を振らせて空振り三振。だが、4回2死二塁のピンチでは追い込んでから投じたフォークが抜け、甘く入ったところを左越えへの先制適時三塁打とされた。
「あれは失投でした。すごく悔しくて、次は絶対に抑えてやろうと思いました」。奥川のスイッチが入った。6回にも2死三塁のピンチで木下を迎えた。「直球に合っていない」と感じたエースは148キロ、146キロのストレートで追い込み、最後もストレートで3球三振。そして8回にもピンチで木下と再び対戦した。初球でこの試合最速の150キロのストレートで空振りを奪うと、147キロ、147キロ、149キロと剛球がうなる。外角にしっかりコントロールされた球は木下を幻惑させた。最後はスライダーで空振り三振に斬って取り、ピンチを脱出。この日は序盤にボールが先行してやや苦しい場面もあったが、中盤以降はストレートが走り出し、敦賀気比打線を寄せつけなかった。
4月の中旬に肩の張りを訴え、調整のため実戦から離れていた。春の県大会ではベンチから仲間の戦いを見守りつつ、「投げなくても、自分にはできることがある」と裏方に徹し仲間をサポートした。北信越大会初戦の砺波工戦でセンバツ以来の公式戦マウンドに立ち、6回を無失点と復活のピッチングを見せた。中2日のマウンドに立つにあたり、敦賀気比の木下のことは意識していた。「良い打者だと聞いていたので。でも今日は試合を楽しもうと思いながら投げました」と失点をしても笑顔を絶やさなかった。「行けるところまで」と言われていたこの日は9回を完投したが、勝負どころでギアを上げ、終盤にストレートで押し続けた奥川の投球はさすがとしか言いようがなかった。
どれだけ好結果を残しても満足な表情を見せないのは、この日も同じだった。「まだまだできるところがあったので……。大事なのは夏。もっとレベルアップしないといけない」と自分に言い聞かせるように言った。約1か月半のブランクを経て、さらにパワーアップしたエースは、ラストサマーへ向け気持ちをみなぎらせた。
(沢井史 / Fumi Sawai)