パ最強の強肩捕手は? 二塁送球タイムトップ5は鷹・甲斐が4位まで独占
番外編は緊急捕手・銀次の「銀次キャノン」、1位は驚異のタイム
ここで、ひとつ番外編を挟もう。登場したのは、楽天の銀次内野手である。元々、捕手としてプロ入りした銀次だが、その後、内野手に転向して1軍に定着。勝負強いヒットメーカーとなって現在に至っている。
そんな銀次が、本職の捕手時代にはチャンスがなかった1軍でマスクを被る機会がやってきた。4月7日のオリックス戦で、9回表に選手総動員で同点に追いついた楽天は、捕手を使い果たしてしまったのだ。
そこで、経験者の銀次が急造捕手としてマスクを被ると、なんと二塁盗塁を見事に刺してしまった。
そのときのタイムは2秒13。若月や甲斐のタイムと比較するとさすがに遅いが、急造であることを考えたら大したものである。このときの送球は大きく一塁側へそれたが、二塁のベースカバーに入ったショートの茂木栄五郎内野手も巧かった。茂木は一塁側へそれる銀次の送球を、ヘッドスライディングする西浦と交錯しないようによけながら捕球。グラブを伸ばして足にタッチしてアウトにしたのだ。
「昔取った杵柄」とはいえ、練習もせずにマスクを被った銀次の送球も立派だが、茂木の技術があっての連携プレーだった。捕手の素早くて正確な送球は必要な要素ではあるが、投手や内野手の協力いかんで、多少タイムが遅くても盗塁は刺せる。それを示したシーンでもある。
正直、いやな予感しかしていなかった。栄えある二塁送球第1位も……やはりこの男、甲斐だった。タイムは驚異の1秒72。よくよく考えれば、実戦で1秒70台を出せる捕手はそうはいない。単純に「二塁へ素早く投げる」という点においては、もはや甲斐の独壇場だ。
この最強タイムで二塁盗塁を刺されたのは西武の源田壮亮内野手である。源田も西川と並んでパ・リーグの盗塁王争いに毎年顔を出しているスピードスターで、このときは投手のモイネロがクイックモーションをしないで投球していた。普通なら間違いなく盗塁成功のケースだったが、甲斐の超速送球によるリカバリーにやられた。
ちなみに、甲斐も源田も大分県の出身。さらには、タッチしたショートの今宮も大分である。これからもパ・リーグの二塁盗塁は、この“大分三人衆”によって先鋭的に切り開かれていくのかもしれない。最後になってプチトリビアに走って恐縮だが、甲斐のランキング独占によりタイムについて述べるネタがつきてしまったゆえ、お許しいただきたい。
結局、今回のランキングは甲斐が1位~4位を独占。しばらくは、他の捕手が入り込む余地がなさそうな完璧さである。
とはいえ、プロはひとたび肩の衰えを露呈してしまうと容赦なく走られてしまう厳しい世界でもある。だから、トップ5には入らなかった他球団の捕手たちも、今回のタイムのすぐ後ろに位置する1秒90台には多数ひしめいているはずだ。
甲斐の送球タイムが改めてすごいことはよくわかった。だが、今回登場しなかった他球団の捕手たちの今後の奮起にも期待している。
今回のランキングに割って入ってくる捕手が出てくるようであれば、この先、厳しい夏場の順位争いにおいても、おもしろい展開が待っているに違いない。