佐々木朗希が語った最後の夏への想い「仲間のために甲子園」「壁を破りたい」
練習試合に先発し3回無失点6奪三振 最速は153キロも変化球自在
最速163キロ右腕で今秋ドラフト1位候補の大船渡(岩手)・佐々木朗希投手(3年)が30日、秋田・由利本荘市の水林グリーンスタジアムで行われた由利(秋田)との練習試合で先発し、3回を無失点、6奪三振。抽選会後、初のマウンドで順調な様子をうかがわせた。試合後は「公立高校としても、大船渡高校としても、長い間(甲子園に)行けていないので、自分たちがその壁を打ち破っていければいいと思います。夏の大会は何が何でも勝ちたい」と強い思いを口にした。
最後の夏へ、佐々木は状態を上げてきている。この日は3イニングで、2度も得点圏に走者を出したが、慌てなかった。初回は無死一、二塁のピンチでは、中軸から2者連続三振を奪い、切り抜けた。3回も2死から安打と四球で一、二塁とされたが、相手打線が変化球狙いと察知すると、ギアを一段階上げて、直球で押して続く打者を見逃し三振。「今日は変化球を含め、制球がよかったです」「ピンチを招きはしましたが、焦ってはいないです。自分のやるべきことをやれば抑えられると思いました」と少しだけ自信をのぞかせ、ほほ笑んだ。キレのあるスライダーの後に、力の入れた直球を見せられたら、なかなか攻略するのは難しい。150キロ超えの直球で追い込まれ、チェンジアップやスライダーを投げ込まれたら…ボールの質だけでなく、駆け引きも、この日は味わいがあった。
最速は163キロ右腕だが、球速を抑えて、組み立てをしている。大船渡・国保陽平監督も日頃のトレーニングから「10割で行かない」「負荷をかけすぎない」ことを念頭に置く。佐々木自身も「チームが勝てるピッチングを」とストレートに頼らず、球種と己を磨いてきた。一冬越して、太くなった下半身を軸に、163キロを出したことで、世界は変わった。「令和の怪物」なんて言葉も生まれた。しかし、「気にしないようにはしていますが、注目されることで応援してくれる人がいるので、頑張りたいです」と少しずつではあるが一生懸命、自分の「今」を受け入れようとしている。
最後の夏へ―。岩手県大会初戦の15日の遠野緑峰戦まで約2週間。残された仲間と時間も少なくなり、絆は強固になってきている。「今まで一緒に頑張ってきた。自分も仲間のために甲子園連れていって、いいものを見せてあげられたらなと思います。チームメートも甲子園を目標にして成長ができたので(自分たちにとって甲子園は)すごくいい場所です」と35年ぶりの甲子園出場へ思いを馳せた。高校生離れした投球でも、試合後仲間と談笑するあどけない笑顔を見ると、高校3年生であることを思い出させてくれる。かけがえのない存在だ。
ノーシードの大船渡は6回勝たないと、頂点にはたどり着けない。高い壁が待ち受けるが、まずは乗り越えようとする気持ちがなければ何も始まらない。そこから方法、戦略や技術の向上が生まれる。自分が壁にぶち当たった時こそ、真価は問われるもの。怪物・佐々木がさらなる進化を遂げる熱い夏は、間もなく始まる。