菊池雄星、起伏に富んだ1年目の前半戦「打たれてよかったと言えるように…」
第4の球種に強い決意「あ、チェンジアップがなければいけない」
春のキャンプから習得に励みながらも今一つ自信が持てないでいた第4の球種、チェンジアップには、直球とスライダーを軸にしていた日本時代とは勝手が違うハイレベルのメジャーで生き残っていくための強い決意が反映されていた。
「こっちに来るまでは本気でチェンジアップを投げようとあんまり思うことがなかった。必要だと迫られる部分ってあんまりなかったんですけど、こっちに来て改めて、『あ、チェンジアップがなければいけない』という気持ちになりました」
コーチ陣から促されていた「落ちる球」は、力で押せない日に粘投へと導く鍵になることをマウンドで実感した。
「真っ直ぐ、スライダー、カーブでいいやって思った自分もいましたけど、やっぱりシーズン戦う中で、それだけで勝負ができないときもある。いいときはいい、ダメなときはダメっていうピッチングにしかならないので。そこはやっぱりこっちに来てしかわからなかったとこですね」
夢の大リーグ初舞台は、3月21日の東京ドームだった。少年時代からの憧れの存在だったイチロー氏(現マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)と共に戦い、同氏の引退を見守る刺激的なデビュー戦を経験。それから10日後には、闘病中だった父・雄治氏を亡くした。起伏に富んだ大リーグ1年目の折り返しへの道のり。菊池はその歩みから得たものを2つ挙げた。
「心・技・体、中4日でいかにいい状態を保つか、自分の力を出せる状態に持っていくことがいかに大事かというところと、それの難しさを感じました。自分のものを出せれば、結果は付いてくる自信もあるので。その精度を高めていけば、絶対に、勝つ確率は増えるだろうと思いますね」
言葉はもとより、異文化と時差のある移動を強いられた環境下で、中6日の日本時代と異なる中4日でローテーションを守り通した菊池は、12日(同13日)からの後半戦へ向けて、気組みを崩さない。
「この先もいろんなことが起きると思いますけど、やっぱり、あの打たれた時期があってよかったなと、シーズンが終わったときに言えるような、そういう数字を最後残してシーズンを終えたいなと思っています」
終始肩の力を抜いて冷静に話を続けた左腕に、後半戦への自信がのぞいた。
(木崎英夫 / Hideo Kizaki)