戦力外、育成、野手転向… プロ5年の苦労人が掴んだ初アーチ「まだ野球がしたい」

ロッテ涌井との対戦は感慨深いものに「まぐれが2回続きました(笑)」

 今年のシーズン前半には、佐野選手にとって感慨深い対戦もあった。5月1日に京セラドームで行われたロッテ戦での涌井投手と初対戦。1打席目でレフトへのヒットを放つと、次の打席ではもう1本。マルチ安打をマークした。

「まぐれが2回続きました!(笑)」

 実は中学時代の憧れの選手だった。学校では涌井投手の下敷きを愛用し、グラブは涌井投手と同じモデルをつかって野球に励むなどヒーローのような存在だった。

「憧れだった凄い投手と、まさか自分が野手として対戦する日が来るとは思ってもみませんでしたね」

 少年時代にずっと眺めていた下敷きに映った憧れのヒーローが、目の前のマウンドに立っている。夢の舞台は今後の大きな財産になったに違いないでしょう。

 最後に佐野選手に、今どんな気持ちで野球に向き合っているのか聞きました。

「打てなかったり、ミスしたり、今でも落ち込むことはありますよ。でも2、3年前の苦しかった時期を思えば、こんなの全然です。今こうして野球を楽しめているのは、あの苦しかったときに諦めずに努力してきた自分がいるから。そしてその姿をみてくれていた人たちが居たから。苦しいときこそ我慢ですね」

 どん底を経験したからこそメンタル面も一皮向けた。プロ5年目で花が開き始めたことに「少しは野手らしくなってきましたかね?」と、その笑顔には野球に苦しめられている様子は微塵も感じない。

 どんな時でも力を尽くそうと努力を重ねる姿はその人の魅力を一層高め、また誰かに勇気を与えることもある。佐野選手をみていると「私も、がんばってみよう」そんな気持ちが沸き上がってきます。辛いときこそ踏ん張りどき。そしてその逆境は自分を大きく成長させ人生を変えるチャンスかもしれない。

 最後にひとネタ加えさせて頂きます。佐野選手といえば無類の動物好きでも知られています。入団当初には動物園を作りたいと言って報道陣の方々を困惑させた程です。

「実家では動物を飼うことを反対されていたんですが、それでも動物が好きだったので、家の近くで捕まえたカメや魚をこっそり自分の部屋で育てたりしていました。(笑)」

 ちなみに今、飼ってみたい動物は陸亀だそうです。動物の話をしているときの佐野選手は少年のような笑顔を見せてくれ、その表情につられるようにこちらまで笑顔になる。近い将来、ヒーローのお立ち台でもそんな笑顔を見せてくれるはずです!!

竹村美緒(たけむら・みお)
2014年から17年までオリックス・バファローズスタジアムアシスタントMCとして活動。18年からプロ野球中継のオリックス・バファローズ戦のリポーターやヒーローインタビュアーを努める。休みの日でも京セラドームでのホーム戦には必ずといっていいほど顔を出し取材に励む。

【写真】今飼ってみたい動物は「陸亀」…“無類の動物好き”佐野皓大が描いた陸亀の直筆イラスト

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