【あの夏の記憶】鳴りやまない電話に「座布団を…」 アイドル球児だった定岡氏の喜びと苦悩
帰郷後は信じられないくらいの人だかり「まるでドラマですよ、もう」
鹿児島実ナインは帰路に就いた。下馬評を覆す奮闘ぶりに定岡氏は「少しはほめられるかな……」と思いながら、故郷へ向かう新幹線に乗った。
目的地に近づくに連れて、異変に気が付いた。
「止まる駅でホームからみんなが僕らに手を振っていました。西鹿児島駅に近づくに連れて、人が多くなりました」
出発時は5人くらいだったが、帰郷後は信じられないくらいの人だかりだった。報道では3000人などとされているが「いや、それ以上だったと思います。まるでドラマですよ、もう」
自宅に戻ってもフィーバーぶりは収まらず、家の電話が鳴りやまなかった。どこからか電話番号を知ったファンからだった。NPB球団や、スカウトからの連絡もたまに混ざっているため、電話線を引っこ抜くわけにもいかなかった。
「女の子と電話で話したことなんてないから、うれしくて話し込んじゃった時もありました。東京の子の東京弁みたいな感じが良くて(笑)。ただ、夜中になっても鳴りやまなくて、うるさすぎましたね。大事な電話もかかってくるので、電話線を抜けないので、座布団を5、6枚、電話の上にかぶせて、音を抑えていました」