西武に12球団最大級の新道場 “練習の鬼”山川の思い継承へ「4番が誰よりも練習する」
山川を駆り立てるきっかけになった上本1軍ブルペン捕手の言葉だった
「練習したら打てる。しなかったら打てない。そう決めないと、練習できないんです。『練習しても打てない』と分かれば練習しないし、逆に『練習しなくても打てる』と分かっても、練習しない。だから練習したら打てないとだめだと思うんです。練習をたくさんすれば、試合に割り切って入ることができる。それで打てなかったら、また練習して、今度は打てるって考えるんです」
山川を駆り立てるきっかけになったのは、現在は1軍ブルペン捕手を務める上本氏の一言だった。2017年限りで現役を引退した上本氏は、現役時代には試合が終わると必ず室内練習場に足を運びバッティング練習を行っていた。2017年の真夏のある日、試合後の練習に現れた山川に上本氏は声をかけた。
「お前は練習しなくても打てるけど、練習すれば誰もお前に勝てなくなるよ」
この言葉が、当時1軍の座をつかみかけていた山川の心に火をつけた。上本氏はこうも言う。
「彼が練習しようがしまいが、打てば誰も文句を言わなくなる。そういうところも含めて言って。『4番を打っているやつが誰よりも練習をしている』というのが後世に繋がっていって、いい伝統になればいいなと思います」
西武は施設が古いなんて、よく言われたものだ。だが、ここにしかないものもたくさんある。1軍本拠地のメットライフドームから、2軍の使用する各施設までは歩いて5分と他球団にはない近さを誇る。だからこそ、上本氏が山川に声をかけることもできた。そしてその姿を、また次の世代の若獅子たちが目に焼き付け、奮起する。新しい設備が導入されても変わらない関係がそこにはある。松井2軍監督の期待する“相乗効果”は、これからさらに加速するに違いない。
(安藤かなみ / Kanami Ando)