オリックス吉田正、山岡 セイバー目線で選出する7月の月間MVP【パ編】
山岡、則本昴が僅差の争い HQS、RSAAで山岡に軍配
7月月間MVP パ・リーグ投手部門
○山岡泰輔(オリックス)
登板5 3勝1敗 投球回数32 FIP2.46 RSAA5.15 QS率60% HQS率40% 防御率3.09 WHIP0.94 奪三振37 奪三振率10.41 K/BB4.63
有力候補の成績は以下の通りとなっています。
有原航平(日本ハム)
登板3 3勝0敗 投球回数21 防御率1.71 奪三振23 奪三振率9.86 被打率.155 与四死球13
美馬学(楽天)
登板3 1勝0敗 投球回数22 完投1 防御率1.64 奪三振18 奪三振率7.36 被打率.151 与四死球7
則本昴大(楽天)
登板4 2勝2敗 投球回数25回1/3 防御率2.13 奪三振30 奪三振率10.66 被打率.174 与四死球7
山岡泰輔(オリックス)
登板5 3勝1敗 投球回数32 防御率3.09 奪三振37 奪三振率10.41 被打率.188 与四死球9
月間3勝、防御率1.71の有原が公式の月間MVP最有力候補とみられているが、月間の規定投球回数(22回)を下回っていることと、四死球の多さが気にかかります。美馬は1勝どまりですが、その1勝が7月19日のソフトバンク戦で8回までパーフェクトに抑え、結果2安打1失点の完投勝利というインパクトのある勝利でした。また、防御率がリーグ1位であることも高評価になるでしょう。則本昴は7月9日の今季初登板から3試合連続でクオリティスタート(QS)を達成。奪三振率11.37と復帰後も以前と変わらぬ投球でチームに貢献しました。
セイバーメトリクスは以下の通りです。
山岡泰輔 FIP2.79 WHIP0.94 QS率60% HQS率40% K/BB4.63 RSAA5.15
則本昴大 FIP2.09 WHIP0.75 QS率75% HQS率25% K/BB7.50 RSAA5.12
有原航平 FIP2.79 WHIP1.05 QS率66.7% HQS率66.7% K/BB2.09 RSAA2.63
美馬学 FIP3.03 WHIP0.77 QS率100% HQS率66.7% K/BB3.00 RSAA2.16
被本塁打、与四死球、奪三振のみで投手を評価するFIP、6イニング以上登板で自責点3以内に抑えた割合を示すQS率など各指標において、山岡と則本昴が僅差で競っています。有原は四死球の多さによりFIPが伸びず、美馬は他の3投手と比べて奪三振数の少なさが要因でFIPが3点台となっています。
山岡と則本昴は、甲乙付け難いデータですが今回は7回以上登板で自責点2以内に抑えた割合を示すハイクオリティスタート(HQS)率、そして平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す指標、RSAA(リーグ平均FIP-選手個人のFIP)×投球回数/9の優位差を考慮して山岡をパの月間MVPとして推挙します。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。