【野球と音楽】ベリーグッドマン・MOCAインタビュー 高校野球最後の夏と厳しくも愛ある“おかん”の叱咤
「野球で成し遂げられなかった悔しい思いを、次は音楽で…」
――(笑)苦しい中にも青春のあれこれが詰まっていて、本当に充実した高校生活だったんですね。
MOCA「充実しすぎて、大学に行ってからの1、2年間はちょっと病みましたね」
――“ロス”ですか?
MOCA「そうですね、ロスですね。だから、大学で友達ができても『そもそも友達って作ってできるもんなんか?』とか、そんな気持ちにもなったりして、18歳、19歳は大学とアルバイトに行くだけで、あとは家にずっといました。
でも、野球で成し遂げられなかった悔しい思いを、次は音楽で成し遂げたいって気持ちにはなってたんです。甲子園で負けた時に、朝日新聞の取材を受けて『野球で果たせなかったメジャーの夢を、次は音楽業界でメジャーになって果たしたいと思います』みたいなイキったことを言ったんですよ(笑)。だから、高校卒業する時に、後輩たちに『好きなもん持ってけ』って、野球道具を全部グラウンドに置いてきたんです。その記事、おかんは今も財布の中に入れてますけど(笑)」
――ご両親は「野球が終わって、ようやく公務員を目指してくれるのかと思ったら、次は音楽か!?」ってなりませんでしたか?
MOCA「おかんが『何考えてんの? 嘘やろ?』って言うから、『いや、ほんまやねん』て(笑)。どうやって音楽をやったらいいのか分からんかったんで、高校の先生に『音楽大学に行きたいんですけど……』て言うたら、先生には冷静に 『気持ちはよくわかるけど、それは無理や』って言われました(笑)。それで調べたら、宝塚造形芸術大学(現・宝塚大学)に新しくサウンドデザインコースというのができるって書いてあって、『これちゃうの? これやろ!』って。音楽の勉強しながら教員の免許も取れるっていうから、ここしかないと思って入学したんです」
――ご両親をちょっと安心させましたね。
MOCA「そうなんです。大学を卒業したら教師になってくれるんやろうって思ったみたいで、『4年間でそんな音楽なんて無理に決まってるやろ。そんな甘い世界じゃありません、音楽は』って言われました(笑)」
――ところが……。
MOCA「ところが、ですよ(笑)。4年生の時、おかんに『就職せえへん』って言ったら泣かれましたね。『そんな子に育てた覚えはない。出て行きなさい!』って言われたけど、出ていくお金もないんで、ずっとしぶとく残り続けてた。そういう22歳でしたね」