「野球以外では優しくしなさい」―軟式野球部を全国大会へ導いた女性監督の力
埼玉・北本中の軟式野球部を率いる関口結監督、埼玉県内に女子監督は4人のみ
埼玉県の公立中学校には現在、軟式野球部を率いる女子監督が4人いる。そのうちの一人が、北本市立北本中学校保健体育科の関口結教諭(30)だ。男子部員が大半を占める軟式野球部の女性指揮官というだけでも珍しいのに、今夏の全国大会にチームを導いたスゴ腕でもある。
北本中は第32回埼玉県中学生野球選手権大会で準優勝し、全国中学生野球岩手大会(8月9~12日・雫石町ほか)の出場権を獲得。埼玉、全国とも重さと大きさは硬球と一緒で、素材は軟球と同じゴム製のKボールを使用する大会だ。
埼玉県中学生野球連盟が主催する今大会には部活動チームのほか、クラブや選抜など42チームが参戦。北本中は2地区に分かれた第1、第2ステージとも順調に勝ち上がり、第3ステージを制して全国大会出場を決めた。もう一方の地区を制した選抜チーム、渡部オールスターズと7月25日に争った決勝には4-5で惜敗したものの、最後の公式戦に懸けた3年生の情熱が結実した。
第3ステージで監督と選手が考えを共有したことが、勝因の一つだという。バント戦法を採用したい指揮官、バントは苦手だと主張する選手。相手に重圧を掛けられるのがバントだ、と諭すうちに受け入れてくれた。「あれで迷わずサインを出せたし、子どもたちも役割を認識して打席に立てた。2試合ともやりたいことが丁寧にできて、理想的な点の取り方でした。こんな戦い方は初めて。かっこ良かったです」と関口監督は少女のような笑顔を振りまいた。
直前にあった埼玉県学校総合体育大会(学校総体)北足立北部地区予選で初戦敗退。いきなり優勝候補同士の対決となり、ライバルの北本東に0-1で屈し県大会出場を逃した。中学生が全競技で一番の目標に掲げ、関東大会と全国大会に直結する一大行事が学校総体なのだ。
ここで負けると3年生は引退するのが慣例だが、北本中は全員が残ってKボール大会に臨んだ。走攻守に秀でた遊撃手の加門知樹は、「応援してくれた全ての人に恩返しする最後の機会なので、全国大会に出場して日本一になりたいという思いが強かった。学校総体で負けた悔しさを晴らせました」と喜びをかみ締める。