日本ハム、世界がまだ見ぬボールパークを目指して… 【パお仕事名鑑Vol.2】

何気なく訪れた、2つのスタジアムでの原体験

 小川さんは高校、大学までは部活でサッカーに打ち込んでいた。ただ、プロの選手になりたくても実力が足りないことは自覚していたという。そこで大学での学びのなかで、スポーツビジネスに興味をもった。当時、国内外の様々なスタジアムを訪問するなかで、大きな印象として残ったのが世界に冠たる2つのスタジアムだった。

「まず、ボストン・レッドソックスの本拠地であるフェンウェイ・パーク。当時、MLBについてはそれほど詳しいわけではなかったんですが、球場周辺の賑わいのつくり方がとても心地良かったと感じました。そこから球場に入ると、試合を見ている人もいれば、天気の良い中、オープンデッキでビールを飲みながら、何となく喋っている人もいるという世界感。こういうのは日本にはないけど良いなと。もうひとつはサッカー。FCバルセロナのカンプ・ノウ。ここでチャンピオンズリーグを初めて見たのですが、その瞬間的な熱狂、この空間の中での歓喜の様子……非日常の楽しいエンターテインメント空間だなと感激しました。そこで将来、日本でもこのような空間・環境が増えることが社会にとっても有益だと考え、スタジアムづくりをやりたいという思いに至ったんです」

 卒業後の選択肢としてスポーツビジネスはあったものの、2007年、2008年ごろには、まだ国内では成熟した市場ではなく、小川さんも、どういうキャリアがあって、どういう会社に入ればそれができるかというのはわからなかった。

「いろいろな人に相談すると、いったんはビジネスとして違うことをしながら、自分なりの強みや経験をどこかで身に着けたほうがいい。別の道に行っても道が閉ざされているわけではないとアドバイスしていただきました。スポーツビジネス・スタジアムという拘りを一旦忘れて考えたとき、海外での濃密な仕事・現場経験、そしてプロジェクトベースで多様な事業体との協働の中で仕事をつくり上げていく働き方をしてみたいと思いました。」

 そこで選んだのが商社だった。

「商社であればそのチャンスも多いだろうと。将来を綿密に計画して決めたわけではないんですけど(笑)。それで海外でのプラント建設の部署に配属されました」

 商社では、ベトナムとシンガポールで2つの発電施設のプロジェクトに、いわゆる上流工程から完成まで関わった。結果的にはこれが現在の業務の経験と知見につながっていく。7年務め、MBA取得のためにスペインへ留学。そしていよいよ北海道へ。

「いつかはスタジアムづくりを、というのは常に頭には残ってました。ただ商社の仕事もおもしろくて、没頭しました。7年目はちょうど仕事にひと区切りついたところでした。留学を終えサッカーの仕事のオファーもありましたが、私がやりたかったのはスタジアムづくり。競技軸ではなく、スタジアム、そしてそれに付随する空間づくりやまちづくりだと整理しました。ただ世界的にそうそうあるプロジェクトでもないので、今回はとてもいい縁をいただいたと思っています」

新球場へにかかる期待の大きさも「ワクワク感の方が大きかったです」

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