球史に残る星稜奥川の投球 10回以降に150キロ超18球…データで楽しむ夏の甲子園
星稜・奥川は延長戦に入ってから平均球速が上がる驚異の投球
奥川投手のイニング別ストレート平均球速と奪三振数の推移を紹介します。
(カッコ内はストレート球数)
1回 149.4キロ(5) 奪三振1
2回 149.0キロ(4) 奪三振1
3回 150.6キロ(7) 奪三振3
4回 152.2キロ(5) 奪三振2
5回 150.7キロ(9) 奪三振3
6回 147.5キロ(7) 奪三振2
7回 148.0キロ(3) 奪三振2
8回 149.8キロ(5) 奪三振2
9回 149.9キロ(7) 奪三振1
10回 152.0キロ(2) 奪三振1
11回 150.9キロ(11) 奪三振0
12回 151.0キロ(3) 奪三振3
13回 149.4キロ(7) 奪三振2
14回 148.7キロ(6) 奪三振0
延長戦以降のストレートの球速が伸びています。10回以降に150キロ以上のストレートを実に18球も投げています。12回はストレートは3球のみですが、スライダー、フォークを駆使して3者三振に退けました。奪三振数は実に23。これは1973年に作新学院の江川卓投手が柳川商(現柳川)との延長15回で記録した23に並ぶ2位タイ記録です。
この好投に報いるように14回裏、奥川投手の後を打つ福本選手が、池田投手の投じた88球目、122キロの甘いコースに入ったスライダーを振り抜き、左中間スタンドへのサヨナラ本塁打としたのです。
ちなみに、奥川投手の球種別Zone%と空振り率は次のようになります。
ストレート 割合 49.1% Zone% 66.7% 空振り率 13.6%
スライダー 割合 42.4% Zone% 42.9% 空振り率 30.6%
チェンジアップ 割合 4.8% Zone% 25.0% 空振り率 12.5%
フォーク 割合 3.6% Zone% 16.7% 空振り率 33.3%
全投球中の空振り率 21.2%
この試合の奥川投手は、球速、球威、コントロールすべてにおいて抜群のできを示す数値を残しており、甲子園史に記録と記憶を残す投球となりました。智弁和歌山の投手陣も投球の65%を外角に集める制球力と粘りで、この試合を大いに盛り上げてくれた貢献者であることを記しておきましょう。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。