西武十亀、約2か月ぶり5勝目の舞台裏「優勝できてよかったと言い切りたい」
昨季10年ぶりリーグ優勝も「その輪に加われない気持ちがあった」
勝てない時期が続くのは、これが初めてではない。「1回負けたくらいじゃなにも変えないけど、前にも1か月半くらい勝てなかった時期があった。その時はトイレ掃除もしたし、靴も、靴下も、ユニホームも新しいものを出したりもした」と過去の苦しい時期を振り返る。当時、西武に在籍していた岸(楽天)からは白星から遠ざかっている時期の気持ちのコントロールについて助言を受けたこともあった。
「結局、僕たちは受け身の仕事。点を取ってもらわないと勝てないんです。だから、ある程度自分の仕事をできたと思えば、負けても次に準備できればいい。それを『(勝てなかったから)ダメ』と言い始めたら、どんどん気持ちが下に行ってしまう」。気持ちを切り替え、整理するようになった。勝ちに恵まれない時期にも、自分のやるべきことに集中した。今年はプロ8年目にして通算50勝にも到達。17試合に先発しクオリティースタート達成(6回以上を投げ自責3以内)は10回と、安定した投球で試合を作っている。
昨年チームは10年ぶりのリーグ優勝を果たしたが、自身は5勝8敗、防御率4.42だった。「その輪に加われない気持ちがあった」と言う十亀。高知で行われていたB班(2軍)キャンプで投げ込みを行ったあと、大粒の汗を拭いながら「もう少ししっかり形として残るような結果を出して、堂々と『優勝できてよかった』と言い切りたい」と話したこともあった。この日は詰めかけた大勢のレオ党の前で8回途中を0封。リーグ連覇をぐっと引き寄せる快投を見せた。お立ち台に呼ばれると「僕の勝ち負けはどうでもよくて。残り少ないマジックの中で自分ができることは、今日のような投球を見せるしかない」と胸を張った。優勝へのマジックはいよいよ「5」。歓喜と勝利の美酒に酔いしれる日は、そう遠くはない。
(安藤かなみ / Kanami Ando)