年上から尊敬された男 先輩・石川が見てきたヤクルト館山のタフさ、不屈の闘志
引退試合を特別な思いで見ていた石川「今の僕があるのもタテのおかげ」
今季限りで現役引退するヤクルト・館山昌平投手の引退試合が21日、本拠地の神宮球場で行われた。特別な思いで見ていた一人のスワローズ戦士がいた。1学年先輩の石川雅規投手だった。
最後の登板を控えた練習時、館山のキャッチボールの相手を務めた石川はボールを捕球するたびに何度も「いいねえ!」と大きな声で球をグラブに収めた。ただ、心の中は言葉の明るさとは正反対。「近年、仲間の投手の最後の登板になる日にキャッチボールの相手をするんです……」。今年18年目を迎えるベテランは、自分より若い選手が引退していくのを見送る回数が増え、毎回、寂しさが募る。
リハビリをしてきた先輩や後輩はたくさん見てきた。しかし、9度の手術を受けるなどした館山ほどの男は見たことがない。だから、同じような経験を自分がしたならば、と考えると、言葉を失う。地道に取り組む館山の姿を尊敬していた。そして、常に前を向いて1軍のマウンドに戻るんだという気持ちが伝わり、精神面のタフさも叶わないと感じていた。
「タテ(館山)が勝てば、なにくそ、僕も勝つぞと思っていたし、今の僕があるのもタテ(館山)のおかげ。だから、ポッカリと穴が開くような、そんな気持ちもある」。試合前、石川はそう静かに話して、館山の最後の日を迎えていた。