今季81試合登板の西武・平井は何が凄いのか? パの強打者3人が鉄腕の特長を証言 

転機はオーバーハンドからサイドスローに変えた社会人時代

 3人の強打者たちが揃って口にするのは、「サイドハンドから投げ込んでくる内角へのスライダーの打ちづらさ」だ。

 大田は言う。「(一般的に)サイドスローの投手は外中心に組み立ててくることが多い。それが、(平井は)2ストライクに追い込んでからも内角の真っすぐもスライダーも投げられる。内角を使えるから真っ直ぐ、スライダーの中でも幅広い投球が出来る。それが他のサイドスローの投手とは違う」。

 浅村が「インコースをしっかり使って意識させられて、スライダーを振らされるのがいつものパターン。それをわかっていても、なかなか打てない」と舌を巻けば、井上も「内角のスライダーが使えるサイドスローは厄介すぎる」と変則右腕が投じる伝家の宝刀を煙たがった。

 そんなリーグを代表する強打者の証言を平井本人にぶつけてみた。三者三様の言葉を聞いた平井は「そう思ってもらえるのは嬉しいですね」とニヤリ。もともとオーバーハンドだったが、ホンダ鈴鹿に入社して1年目を終えたときに「このままではクビになる」と言われたことをきっかけにサイドに転向した。もともと身体の回転が横投げに適していたこともあって球速や変化球の精度が飛躍的に向上し、プロへの切符をつかみとった経験を持つ。

 シーズンを通して強打者たちと繰り返し対峙した右腕は「(何度も対戦するのは)しんどい」と言いながらも、「対戦はじゃんけんみたいなもの。グー、チョキ、パーでどれかを出すだろうって。(抑えた場面は)じゃんけんに勝ったということ」と潔い割り切りがあるようだ。「気持ちで負けない。“やばい”と思ったとしても、悟られない」とマウンドではポーカーフェイスを貫く。どんな窮地でも飄々とかわす“平井様”と、勝負を決める一打を狙う強打者たちの駆け引きから目が離せない。

(安藤かなみ / Kanami Ando)

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