帝京、神宮第二最終戦で4強入り 前田監督「また1週間いい練習を」

2番手で登板し好投した帝京・柳沼【写真:安藤かなみ】
2番手で登板し好投した帝京・柳沼【写真:安藤かなみ】

帝京は神宮第二球場で行われた都大会準々決勝で日大三に競り勝つ

 秋季東京都高校野球本大会の準々決勝が行われ、帝京と日大三が対戦した。竣工から58年間にわたって東京の高校野球の舞台として様々なドラマの舞台となってきた神宮第二球場だが、来年に迫った五輪に伴う再開発での解体が決定している。神宮第二球場で行われる最後の試合が、大会屈指の好カードとなり、試合前から入場規制がかかるほどの大盛況に。試合は帝京が6回に勝ち越し、1点のリードを守り切って4強入り。神宮第二球場はその約60年の歴史を、帝京の校歌とともに終えた。

 帝京は1点を先制された直後の6回、無死一、三塁から代打・尾瀬の二ゴロの間に同点に追いつくと、続く武者が投手の前に絶妙な打球を転がし、これが勝ち越しスクイズとなった。その裏から、帝京は2番手の柳沼が登板。先頭で迎えた4番・大城から三振を奪い、波に乗った。ストライク先行の投球で1点のリードを守り切り、強打の日大三打線に反撃を許さなかった。9回2死で迎えた打者を左飛に打ち取り、神宮第二最後のマウンドをゼロで締めた柳沼は「夏の大会で投げることができなかったのは自分の力不足。真っ直ぐのコントロールや、変化球の精度を上げてきた」と汗を拭った。

 日大三に毎回のように走者を許しながらも、要所で帝京の中堅手・加田の好守が光った。主将も務める加田は初回、2死一塁から大きな飛球をフェンスに背中からぶつかりながら捕球し、チャンスの芽を摘んだ。4回には1死一、二塁のピンチで中堅前に落ちようかという鋭い打球に飛び込むダイビングキャッチ。一塁走者が飛び出しており、加田は落ち着いて一塁に返球。併殺を完成させ、この窮地も無失点で乗り切った。帝京・前田監督は「彼がキャプテンとしていい声を出して、選手を動かしてくれている。キャプテンにして大正解だったね」と目を細めた。

 前田監督が「キャプテン向きの性格」と評する加田だが、1年時には「主将は絶対に嫌だ」と話していたという。「中学でキャプテンをやって苦労していたようだったからね」という前田監督。一度は加田を主にベンチ入りメンバーで構成されるAチームではなく、それ以外のBチームに振り分けた。しかし「Aチームの歯車が合わなくなった」と感じた前田監督は合宿中に加田を呼び出し、「レギュラーでやりたいのか? それならキャプテンをやりなさい」と説得した。「(加田は)気持ちが強い選手。それを生かせる方法を探していた。もったいないからね」という前田監督の狙い通り、加田を主将に据えたチームは躍進。「選手が考えて動いているのだから、監督は(余計なことを)やる必要ない」とその自主性を重んじる考えを口にした。

 この日は神宮第二球場で行われる最後の試合ということもあり、スタンドには大勢の高校野球ファンが詰めかけ超満員に。「こういうゲームができたことは、選手の自信にもなったと思いますよ」と頷いた前田監督。9日に行われる準決勝では創価と対戦することが決まっている。「選手は『まだまだ』と言っていますし、また1週間いい練習をしたい」と意気込んでいた。

(安藤かなみ / Kanami Ando)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY