昨年受賞のデグロム有力も ド軍柳賢振にも可能性…ナ・リーグCY賞を予想
デグロムは11勝、ストラスバーグは最多勝、柳賢振は防御率のタイトル獲得
サイ・ヤング賞はNPBの沢村賞とよく比較されるが、沢村賞は1947年創設、サイ・ヤング賞は1956年に創設された。選考方法や基準も異なっている。
沢村賞が選考委員による選考なのに対し、サイ・ヤング賞は記者投票だ。サイ・ヤング賞は現在の沢村賞と同様、設立当初はア・ナ両リーグから1人だけ選出されていたが、1967年から両リーグで各1人ずつ選出されるようになった。選定の基準も沢村賞とは微妙に違う。
・ポストシーズン(地区、リーグシリーズ、ワールドシリーズ)の成績は加味されない
・リーグでの順位はあまり考慮されない。
・選考対象には救援投手も含まれる。
・タイトルはあまり考慮されない。
・WARの数値が重視されるが、それ以外の要素も考慮される。
WAR(Wins Above Replacement)とは、セイバーメトリクスによる打撃、走塁、守備、投球を総合的に評価して選手の貢献度を表す指標。投手も野手も比較することができ、近年、選手の評価や契約などで最重要視されている。
また近年、MVPが野手から選ばれることが多くなったため、サイ・ヤング賞は実質的に「投手のMVP」になっている。
今季のナ・リーグのサイヤング賞を予想しよう。
○過去10年のサイヤング賞受賞者。(チーム名/地区順位)WはWARとそのリーグ投手での順位
2018年 J・デグロム(メッツ/東4)10勝9敗 269K 防御率1.70 W9.6(2)
2017年 M・シャーザー(ナショナルズ/東1)16勝6敗 268K 防御率2.51 W7.2(1)
2016年 M・シャーザー(ナショナルズ/東1)20勝7敗 284K 防御率2.96 W6.3(2)
2015年 J・アリエッタ(カブス/中3)22勝6敗 236K 防御率1.77 W8.3(2)
2014年 C・カーショー(ドジャース/西1)21勝3敗 239K 防御率1.77 W7.7(1)
2013年 C・カーショー(ドジャース/西1)16勝9敗 232K 防御率1.83 W8.0(1)
2012年 RA・ディッキー(メッツ/東4)20勝6敗 230K 防御率2.73 W5.7(2)
2011年 C・カーショー(ドジャース/西3)21勝5敗 248K 防御率2.28 W6.7(4)
2010年 R・ハラデー(フィリーズ/東1)21勝10敗 219K 防御率2.44 W8.6(1)
2009年 T・リンスカム(ジャイアンツ/西3)15勝7敗 261K 防御率2.48 W7.4(1)
昨年のデグロムは10勝9敗と勝敗だけなら平凡な成績だったが、防御率1位、WAR2位という内容の良さで受賞した。10勝はサイ・ヤング賞受賞者では最少だった。
2019年の候補を見ていこう。WARの投手5傑とタイトルホルダー。
1 J・デグロム(メッツ/東3)11勝8敗 255K 防御率2.43 W7.3
2 S・ストラスバーグ(ナショナルズ/東2)18勝6敗 251K 防御率3.32 W6.3
3 J・フラハティ(カーディナルス/中1)11勝8敗 231K 防御率2.75 W5.9
4 M・シャーザー(ナショナルズ/東2)11勝7敗 243K 防御率2.92 W5.8
5 M・ソロカ(ブレーブス/東1)13勝4敗 142K 防御率2.68 W5.7
8 柳賢振(ドジャース/西1)14勝5敗 163K 防御率2.32 W5.1
最多勝は18勝のストラスバーグ、最多奪三振は255のデグロム、最優秀防御率は2.32の柳賢振だ。
デグロムが昨年に続いて11勝ながら有力。対抗はストラスバーグ。デグロムが204回なのに対し、ストラスバーグは209回とイニング数が多い。奪三振数もほぼ互角。
防御率1位の柳賢振も、一時期は有力と言われたが、WARは8位。投球回数は182.2回であり、届かないか。柳が受賞すれば韓国人初。日本や台湾を含む東アジアでも初となるだけに注目したい。
なお、ダルビッシュ有投手(カブス)はWAR3.3で投手では18位だった。
(広尾晃 / Koh Hiroo)