【プレミア12】“1点OK”の守備で点が取れなかった日本 元オリ監督森脇氏「ゲームのあや」
先発・高橋がピンチの場面で見せた“入り方”
先発の高橋はペナントで見せた持ち味を少し発揮できなかった。彼の武器は“変則”だけでなく力強い直球と緩急を使った制球力に大胆かつ繊細さを心身で表現できるところだ。勝負事は後手を踏まないことが大切だ。国際大会の難しさなのか珍しく後手に回るケースが見受けられた。
若いとはいえ大舞台も経験済みだし、調子の良し悪しに左右されない素晴らしい投手なのだ。2回1死一、三塁でダルベックに左翼線へタイムリーを浴びたのは初球の変化球。そのあと点を与えない踏ん張りを見せただけにあの入り、あの一球が悔やまれる。ただ、大きな自信となる部分があったマウンドでもある。彼なら気付いているだろう。ペナントを見ていると処理能力と学習能力の高さにはいつも感心していた。今後の彼から目が離せない。
これは私の野球観になるが5回1死一、二塁から菊池が遊ゴロ併殺に倒れた場面。いずれも四球で出塁した走者で菊池、近藤、誠也と続きじっくり打たせたい場面でもある。しかし、投手のクイックタイムのアベレージは1.80で塁上は外崎、丸と役者は揃っている。仕掛ける準備はあったのか興味深い。
いずれにせよ、他国は日本の足に過敏になっている。5回1死一塁で外崎を警戒するあまり丸にも四球を与え、7回1死一塁同じ組み合わせでは初球を投じる前に全力で3球連続牽制、カウント1-1からウエストまでした。いずれも2点差だったが多いに仕掛けて良いケースではある。
アウトにできる牽制を持つ投手は少なく大半がクイックモーションに難がある。二塁走者に対しての牽制、クイックに至っては更に落ちる。アウトになってはいけない場面はあっても走っていけない場面はない。少し点差がある時などはそのチャンスは膨らむ。ビッグゲーム、短期決戦は試合巧者でなければ勝てない。パワーでは少々劣っても試合巧者という点では日本が一番だと信じる。選手任せと選手主導は違う。手綱を締めながら伸び伸びプレーさせ、自在に使いこなす稲葉監督の手腕に今後益々期待したい。
今大会、初黒星を喫した侍ジャパンだが勝敗を分けたのは本当にごくわずかな差だった。この1敗に悲観することは全く必要ない。日本の野球はできているだけに、まだまだ楽しみなゲームを期待できるはずだ。
◇森脇浩司(もりわき・ひろし)
1960年8月6日、兵庫・西脇市出身。現役時代は近鉄、広島、南海でプレー。ダイエー、ソフトバンクでコーチや2軍監督を歴任し、06年には胃がんの手術を受けた王監督の代行を務めた。11年に巨人の2軍内野守備走塁コーチ。12年からオリックスでチーフ野手兼内野守備走塁コーチを務め、同年9月に岡田監督の休養に伴い代行監督として指揮し、翌年に監督就任。14年にはソフトバンクと優勝争いを演じVの行方を左右する「10・2」決戦で惜しくも涙を飲んだ。17年に中日の1軍内野守備走塁コーチに就任し18年まで1軍コーチを務めた。球界でも有数の読書家として知られる。現在は福岡6大学野球の福岡工大の特別コーチを務め、心理カウンセラーの資格を取得中。178センチ、78キロ。右投右打。
○『世界野球プレミア12』の主な予定(テレビ朝日系列で放送)
11月13日(水)午後6時45分~ 「日本×メキシコ」
11月17日(日)「決勝」
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)