監督生活33年 「岩手の名将」沼田尚志氏の勇退記念慰労会に約100人が出席

最後の指揮となった今夏の岩手県大会は準々決勝で花巻東に敗退

 発起人代表を務めた同い年の学法石川・佐々木順一朗監督は「私は大学卒業後に10年間、サラリーマンをしてから野球界に戻ってきたので、沼田監督は(高校野球の)監督として大先輩。33年間のご苦労に敬意を表したいと思います」とねぎらった。東北地方や関東地方、遠くは沖縄でも練習試合をし、幅広い人脈を持つ沼田氏だが、佐々木監督との対戦には思い入れもひとしお。なかなか勝てず、「最後の年くらいはなんとか勝たせてもらおう」と今年は3月の練習試合解禁から対戦。1勝1敗で迎え、勝敗をはっきりつけようとした6月の練習試合は雨でできなかった。「それでも悔しくて」と沼田氏は言う。

「なんとかしてやろうと思い、『じゃあ、じゃんけんでやろうか』と言って、スターティングメンバー9人でじゃんけんをやらせてもらってですね」というと会場は笑いの渦に包まれた。「雨のグラウンドで1番バッターからじゃんけん大会が始まりまして、なんと、5-4でウチが勝っちゃいました」に会場は拍手喝采。沼田氏が「それがおそらく、初めてジュンちゃん(佐々木監督)に勝ったゲームだったかなと」とおどけると、佐々木監督は「あんなに悔しいことはない!」と応じ、会場には笑いが広がった。

 学法石川・佐々木監督と“決着”をつけた勢いで最後の夏に挑んだが、主力選手にけが人が相次いだ。それでも、30年以上の指導歴を誇る百戦錬磨の沼田氏。選手たちの頑張りもあり、チームは準々決勝まで勝ち進んだ。

 相手の花巻東の佐々木洋監督と流石裕之部長は国士館大の後輩。さらに4番の水谷公省(2年)は国士館大の後輩である横浜隼人・水谷哲也監督の息子という間柄。一関学院は初回に1点を先制したが、その裏、水谷に2ランを浴びて逆転を許し、3-9で敗れた。水谷監督は「親父は空気を読めるんですけど、息子はまったく空気を読めません。申し訳ございませんでした」と“謝罪”。「本当に冷たい後輩を持って、幸せでした」という沼田前監督の冗談に会場は爆笑だったが、こんなほろりとくる話も。

「嬉しいことに、流石部長と水谷公省くんが球場の玄関で待っていてくれました。人目もはばからず涙ぐんで『本当にお疲れさまでした』というので、私ももらい泣きしてしまいました。佐々木監督も花巻東の選手たちに一関学院の監督にお世話になったと涙ぐんで話してくれたと聞きました。負けて、本当に悔しかったんですけど、後輩と後輩の息子さんに引導を渡されて、嬉しいような、複雑な気持ちで監督を終えることができました」

 花巻東・佐々木監督は「岩手県も全国で勝ち始めるようになりましたが、間違いなく、全国の重い扉を開けたのは沼田監督だと思います。沼田監督が岩手県に残した功績は大きい」とたたえ、横浜隼人・水谷監督は「(センバツの)希望枠2回という我らの希望の星・沼田尚志」と表現した。2人にとっても沼田氏は“恩師”だ。

花巻東・佐々木洋監督、横浜隼人水谷哲也監督も沼田氏の薫陶を受ける

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