西武メヒアが楽天守護神・松井を“攻略”できた訳 3打席の詳細から理由を探る

シーズン打率.211のメヒアだが対松井ではボールを冷静に見極める

 もちろん、この打席でも直近2回の対戦と同様に配球の変化はあった。初球のストレートがファウルになると、バッテリーは過去2回の被弾時には投じていなかったスライダーを選択。この球が足元に外れてボールになると、続く3球目にもスライダーを選択。ストライクゾーンに来た変化球をメヒアが空振って2ストライクとなると、捕手の太田光は次の球を要求する際に中腰になって構えた。

 松井がそこで投じた球は高めのストレート。1ボール2ストライクという状況を考えても、「釣り球」としての選択だったことは想像に難くない。しかし、メヒアはその4球目、アウトコース寄りに来た高めのボール球を、豪快なスイングで引っぱたいた。

 身体から遠い位置に来たボールを引っ張り、飛距離を出すことが難しいのは周知の通り。しかし、メヒアの怪力と長いリーチはそういった不利な要素をものともしなかった。力強く捉えた打球はレフトへ高々と舞い上がり、試合を決める一打となってスタンドに飛び込んだ。

 この打席においては、ストライクゾーンに来た変化球を空振ったという点が過去2回の本塁打とは異なっている。しかし、バットが届く位置に来た釣り球に対して、積極的に手を出したことが好結果へとつながった。

 変化球に対して振り回したり、追いかけたりすることなく、狙っていた直球を確実に本塁打にする。言葉にすると簡単だが、プロの舞台でそれを実行するのは言うまでもなく難しい。松井ほどのクローザーが相手ならばなおさらだ。シーズン打率.211と苦しいシーズンを送ったメヒアが、松井のボールは総じて冷静に見極められていたという点も、また興味深いところだ。

 今シーズンは松井に対して無類の強さを誇ったメヒア選手だが、「松井投手は本当に素晴らしい投手なのですが、自分が打席に立つときは相手のピッチャーよりも自分との戦いだと思っていますので、いいピッチャーでも打ち返せることがある。難しい試合の中で、チームを助けることができてすごく嬉しく思っています」と、若き守護神に対するリスペクトの姿勢は崩さなかった。

 昨季まで西武の十亀剣投手が、ソフトバンクの松田宣浩内野手に打ち込まれていた例がとりわけ有名だが、特定の投手にとって、「天敵」と言われるほどに対戦成績が悪い打者が存在するケースは少なくない。

 それを単なる「相性」で片づけてしまうのは簡単だが、今回のように、具体的な打席内容に目を向けてみると、そうなった要因が少しづつ見えてくることもある。バッテリーと打者の考えを基に、今後の対戦成績がどう変遷するのかを予想してみるのも面白いのではないだろうか。

(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY