鷹・高村1軍投手コーチが「投手の育成」について語る 「どれだけ考えさせるかが重要」
日本野球科学研究会第7回が開催 普及、次世代の育成活動
11月30日に東京都町田市の法政大学多摩キャンパスで日本野球科学研究会第7回大会1日目が行われた。日本野球科学研究会は、野球に関する広範な研究を専門とする研究者と、プロ、社会人、大学、高校などの野球指導者、トレーナー、企業の研究者などによる研究会。毎年1回、研究会のメンバーが一同に会し、成果を発表する大会を開催している。
今大会のテーマは「普及と育成 そのカタチ」
野球の競技人口が減少する中、関係者が試みている普及、育成活動の一端を紹介しようというものだ。
大会実行委員長の平野裕一法政大学スポーツ健康学部学部長による開会式のあと、シンポジウム1「育成のカタチ」として、法政大学大学院の佐藤理恵氏と、ソフトバンク1軍投手コーチの高村祐氏が登壇。北京五輪の金メダリストで、東京女子体育大、同短大講師でもある佐藤氏は、次世代の育成、強化方針について語った。
高村投手コーチは、ブルペン担当。投手を育成する上で大事なことは「見てあげる」ことであり、練習だけでなく食事や入浴、挨拶の仕方などもじっと観察して、必要なことはメモをとると語った。この選手の既往歴を頭に入れていると、その仕草の意味がわかってくるとのこと。トレーニングコーチやトレーナーともその選手の既往歴を共有している。さらに選手には「どれだけ考えさせるかが重要」と語った。日頃聞けないプロ野球の一線級のコーチの話だけに、会場内からは質問が相次いだ。
講演1では、大教大の榎木泰介准教授が「エネルギー供給から見た体力トレーニング」と題し、野球の練習と代謝の関係について紹介。野球科学研究会大会といえば「ポスター発表」。企業や大学の研究者、指導者などが1つのテーマで研究発表をするものだ。
今回は、過去最多の77ものポスター発表があった。昨年は、米子東高校の研究発表が話題となり、特別新人賞を受賞したが、今年は米子東高校からは「野球の動作において、動画を用いた練習方法は有効なのか」「野球の動作においてどのオノマトペが最適か」「高校野球において『流れ』は存在するのか」と3本のテーマで出展があった。紙本庸由教諭の指導のもと、今夏甲子園に出場した遠藤想大、平山悠斗、長尾駿弥、岩本勇気、岡本大翔、松田凌、山内陽太郎、土岐尚史など2年生の高校球児がポスターを作成。来場者への説明も行った。まさに「文武両道」の取り組みだった。
また今年は広島県立祇園北高校が「初球からバットを振っていけ―野球データを解析して指導者の言葉を検証する―」という発表も行った。「野球離れ」が顕著になる中、日本各地で多様な取り組みが行われていることを実感できる大会だった。
(広尾晃 / Koh Hiroo)