DeNAドキュメンタリー映像制作の舞台裏 撮影監督が明かすチームとの距離感
1年目には怒鳴られたことも… 「僕は邪魔者だっていう自覚はあって…」
1年目だった2018年シーズン。救援に失敗した守護神の山崎康晃がロッカーでうなだれる姿を撮影し続けた辻本監督は、仲間を思うロペスに「いい加減にしろ、カメラを止めろ!」と怒鳴られた。だが、その翌日にはロペスから「昨日はすまなかった。君の仕事だとは分かっているんだけど」と声を掛けられ、2人の距離がグッと縮まったという。「こういう繰り返しがあって、心を開いてくれた選手もいると思います」と監督が話す通り、今季の作品ではより選手の内面や素顔に近づいた印象がある。
選手のふとした表情、シーズン中の潮目などを逃さずカメラに収める日々。辻本監督は「僕は邪魔者だっていう自覚があって、邪魔者じゃなくなるために選手の役に立つようなことをしようと思ったんです」と話す。
「単純にカメラを向けられたら嫌じゃないですか。ありがたいことに取材でカメラを向けていただくこともあるんですけど、むちゃくちゃ慣れないというかどちらかというと苦手で(笑)。ロッカーで向けられたら、きっと嫌だろうなと感じた時に、選手たちの素顔にこのままでは近づけない、選手に必要な人になろうと思いました。去年から始めたんですが、選手が練習中にトスバッティングのフォームだったり投球フォームを確認したい時に、その様子を撮影して送るようにしたんです。『思いつきのままに、いつでも言って』という柔軟なスタンスで。初めは柴田(竜拓)選手だったと思うんですけど、そこから神里(和毅)選手、筒香選手と広がって、いろいろな選手から声を掛けてもらえるようになり、少しずつ距離が縮まっていきました。コミュニケーションを自分から積極的にとるように努力することで、劇中にも登場しますが、筒香選手からモチベーションムービーの制作相談を受けたり役に立てるようになった気がします」
誰よりも近い距離からチームにカメラを向けなければいけない辻本監督。だが、時として近すぎて見えなくなるものもある。そんな時は、エグゼクティブプロデューサーの球団ブランド統轄本部・里見夏生氏、構成を担当した同じく球団ブランド統轄本部・前原祥吾氏の指導を仰ぐことだったという。
「僕はチームに同行して、監督・コーチたちや選手たちの温度感を肌で感じている。里見さんや前原さんからは、その状況を俯瞰で見た時の意見をもらう。密に連絡を取り合いながら、撮影を重ねたというイメージですね。例えば、シーズン序盤で10連敗した時、ファンは絶対に舞台裏で何があったのかを見たいし、勝ったら何があったのかを知りたい。今、選手たちは何にもがいているか、そこは撮れていますか?と鋭い指摘をいただいたり。さまざまな軸からチーム、選手を見つめられたのではないかと思います」