共通点は明大主将&ドラフト1位 中日柳が広島森下に伝える「失敗の教訓」
柳と森下は3年違い、明大野球部の寮では1年間同部屋だった
同じ道を3年早く歩んできた。明大で主将を務め、ドラフト1位でプロの世界へ。今季11勝を挙げてブレークした中日・柳裕也投手は、広島に入団した森下暢仁投手を“直系”の後輩として気にかける。鯉期待のルーキー右腕に伝えたいのは、自身がプロ1年目で味わった苦い経験。竜の次期エースは、マウンドで先輩としての手本を見せていく。
10月のドラフト会議直後、森下から報告のLINEが届いた。いつもならスタンプで簡単に返事をするような間柄だが、この日ばかりはきちんと思いを記した。「明治での4年間は正解だったね!」。自らと同じくドラフト1位を勝ち取った後輩が柳は誇らしかった。
大学では4年生と1年生の立場で1年間ともにプレー。寮では同部屋だった。森下の入学前、柳は善波達也監督や坂本誠志郎(現阪神)と一緒に大分に出向き、大学野球の魅力について話をしてあげたこともあった。「僕は4年になってキャプテンをやらせてもらって、すごくいい経験ができたので」。チーム全体のことを考え、自らを律しながら行動することで人間としても成長できたと思えるからこそ、森下にも同じ経験をしてほしかった。
柳は4年秋の明治神宮大会で日本一をつかみ、ドラフト1位で中日に入団。ちょうど今の森下のように、即戦力として開幕ローテ入りを期待されていた。だが蓋を開けてみれば、開幕前に故障で出遅れ、プロ初勝利は挙げたものの11試合登板で1勝4敗、防御率4.47に終わった。
「自分がやれること以上のことをやろうとしていました。ブルペンに入ると目立たなきゃって思って、体が万全じゃなくても無理していた部分があって……。それでどんどん歯車が狂っていく感じでした」
想像とは全く違った2年前のルーキーイヤー。周囲から過度な視線を浴び、自らを失い、焦りだけが募る日々だった。それを教訓と変え、今度は可愛い後輩への助言に――。球団は違っても「暢仁のことはいつも気にしているので」。同じ舞台に立つ後輩の躍進を心待ちにする。
1年目は「反面教師」となったが、今季3年目で「お手本」も示せた。シーズンを通してローテを担い、チーム最多の11勝。右のエース筆頭格に躍り出た。「暢仁がプロに入ってくるころに、自分が埋もれているわけにはいかない」。これからは先輩としても、他球団のライバルとしても負けられない。常に、森下の少し先を、走り続けてみせる。
(小西亮 / Ryo Konishi)