故・金田氏への退場宣告「あんたほどバカじゃない!」元パ審判員が語る鬼の形相と温かみ
元パ審判員・山崎夏生氏、激情家の多かった当時の監督「金網デスマッチを挑む感じ」
1982年からパ・リーグの審判員を務めた山崎夏生氏は、2018年に審判技術指導員を退職した後、審判の権威向上を目指して講演や執筆活動を行っている。「Full-Count YouTube」では昨年10月にこの世を去った金田正一さんについてのインタビューを収録。「かなりやり合いました……」と思い出を語っている。
今ではあまり見られなくなった審判への猛抗議。山崎さんは1991年5月、ロッテの監督だった金田正一監督を退場処分にした。少し外れたボール球を見極め「ボール」とコール。すると「どこ見とんじゃ! バカヤロー!」と鬼の形相で金田監督が三塁ベンチから出てきた。「抗議も迫力がありました。今でもボールだったと言い切れます」と振り返る。審判への暴言として、即刻、退場処分とした。
バカヤロー! と言われて、何も感じないはずはない。山崎さんは思わずこう言い返してしまった。
「あんたほど、バカじゃない」
審判も負けてはいけないと、闘志をむき出しにしていたという。
後日、別の試合で再会した金田氏に「お前は大学、出とったか。申し訳ない」と謝罪を受けた。しかし、ホッとしたのは一瞬だけ。「金田さんは『バカヤローではなく、ヘタクソ! って言えばよかったな』と言っていました。試合前にもう1度、退場をさせようかと思いました」と当時を回想して、笑った。近年も1度、対面したそうで「その時は『お前のせいで10万円の罰金払ったわ』と笑顔でいらっしゃいました」と故人をしのんだ。球場では熱いが、温かい人だった。
山崎さんが審判員を務めていた時期のパ・リーグの監督たちは、日本ハム・近藤貞雄さん、近鉄・仰木彬さん、オリックス・上田利治さんらという錚々たるメンバーが指揮をしていた。「特に当時の川崎球場は高い金網フェンスに囲まれていたので、金網デスマッチを挑むような感じだった。今日、生きて帰れるかなとか、不安でした」と闘志を前に出して、審判員をしていたことなど、インタビューでは当時と今の球界の風潮の違いなどを明かしている。