見直す余地がある“日本野球の礼儀” 罵声、ヤジ、国際大会での配慮に欠けた声

国際大会で耳にする相手チーム、審判へのヤジ、罵声「あからさまに不服そうな表情をする選手がいる」

 アマチュア野球の国際大会の運営を長年担当してきた関係者は「国際大会での日本チームで目立つのは、審判に対する態度ですね。不利な判定をされると、あからさまに不服そうな表情をする選手がいる。審判の判定のたびにヤジを飛ばす指導者もいる。それに、自軍の投手にベンチから大声で『このバッターあたらないよ、カモだよ!』と言ったりする。言葉がわからないと思うからでしょうが、そうした態度は雰囲気で相手に伝わるものです。いつもひやひやしますね」と指摘する。

 その関係者は日本チームの「挨拶」にも言及する。「選手たちは、会場で日本人の野球関係者に会えば、帽子をとって大きな声であいさつしますが、他の国の選手や指導者とすれ違っても、何もしません。彼らのあいさつは『身内』だけのものなんでしょうかね」

 日本野球の「礼儀正しさ」の違和感を解明するカギは「スポーツマンシップ」にある。「新しいスポーツマンシップの教科書(広瀬一郎著)」には、前回、1964年の東京オリンピックの前に刊行された「コーチのためのスポーツモラル」という本からの引用として「スポーツマンシップは、一言で言えば『尊重(リスペクト)すること』だ」という言葉が紹介されている。

 野球だけでなくすべてのスポーツの試合は「ルール」「プレーヤー」「審判」の3つがなければ成立しない。この3つの存在、意味を理解し、大切に思うことこそスポーツマンシップの基本的な前提条件なのだ。「プレーヤー」の中にはもちろん、対戦相手も含まれる。

 本来、スポーツにおける「礼儀」とは、「ルール」「プレーヤー」「審判」に対するリスペクトを表わすことだ。試合中は形だけの挨拶ではなく、この3つを尊重していることを態度に示す必要がある。この前提に立てば、相手チームの選手をヤジったり、審判の判定に不満そうな表情をするのはスポーツマンシップに反しているということになる。

 日本の野球選手の「礼儀正しさ」が、身内に対してのみ発揮されているのだとすれば、それは見直す必要がある。スポーツの国際化が進む中、日本国内でしか通用しない「礼儀正しさ」は、アップデートされなければならないだろう。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

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