王貞治氏が語った野村克也さん 「感覚プラス頭脳」「野球は受け継がれている」
野村氏といえば“ささやき戦術”「なんかブツブツ言ってたね」
野村氏といえば、試合中に打者へと話しかける“ささやき戦術”が有名だった。王会長は当時を思い返し「なんかブツブツ言ってたね」と一言。そして「聞こえるけど、それで打つ方にどうの、というのはなかったですね。それを聞いているようじゃバッティングできませんから。それに引っかかってるようじゃいい結果出せないから」と、王会長自身は打撃への影響はなかったと明かす。
とはいえ、野村氏の野球観には敬意を抱いている。「頭の野球をやってましたね。常に今から前に進めていくためにどうすればいいかを考えていました。我々はどちらかというと感覚的な野球でやってきましたけど、ノムさんは感覚プラス頭脳的な野球をやったってことで、選手としても監督としても成功したんじゃないですかね」。監督時代も“ID野球”として成功を収めた野村氏。その頭脳は王会長も認めるところだったようだ。
今の現役監督や現役選手の中にも野村氏に薫陶を受けた人は多い。西武の辻発彦監督や日本ハムの栗山英樹監督、楽天の三木肇監督、阪神の矢野燿大監督、ヤクルトの高津臣吾監督、中日の与田剛監督は“教え子”に当たる。さらに侍ジャパンの稲葉篤紀監督もそうだった。
「体の感覚だけじゃなく頭脳を使って、どういう風に自分の持てるものをいい結果につなげるか、というのが野村さんの野球だった。そういう点では今の時代に“ノムラ野球”というのは十分受け継がれている。選手に伝わって、それを選手たちが消化している。野村イズムはこれからも生きていくと思います」
今季、ホークスの背番号「19」を受け継いだ甲斐拓也をはじめ、著書を通して野村氏の考えを吸収している選手も数多くいる。王会長は現在でも脈々と受け継がれている野村氏の野球観の素晴らしさを称えていた。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)