わずか5分で野球少年の未来を守る「野球肘検診」 エコー検査で分かる肘の障害は?

最大のメリットは痛みがないごく初期のOCDも鋭敏に発見することが可能

 エコー検診は、痛みがないごく初期のOCDも鋭敏に発見することができる。これが野球肘健診でエコー検診を受けることの最大のメリットだ。またエコー検診は、受診者とともにモニター画像を見ながら患部を説明することができる。「ほら、ここに筋が入っているだろ、ここが痛んでいるんだ」とその場で説明することで、選手や保護者、指導者も納得しやすい。

「胸郭出口症候群」の発見もエコー検診は得意だ。この障害は、OCDより少し上の年齢、中学生から大学生にかけてよくみられる。胸郭出口症候群は、鎖骨上窩付近の前斜角筋・中斜角筋・第一肋骨で形成されるすきま(胸郭出口)が狭いために、そのすきまを走行する鎖骨下動脈と腕の神経の束が圧迫され、肘に痛みや痺れが現れるものだ。胸郭出口症候群は、早期に発見して治療、リハビリをしないと野球ができないだけでなく、日常生活にも影響が出ることになる。

 胸郭出口症候群は、野球の世界では「血行障害」と言われることが多い。漫画「Major」では、主人公の茂野吾郎がアメリカにわたってから、検診を受けて胸郭出口症候群と診断されるシーンがある。

 胸郭出口症候群は、エコー検診で容易に発見することができる。またエコー端末を当てながら腕を上下させることで、胸郭出口の血流の状態を診ることもできる。特に中学野球の選手で体が大きくて、成長の早い選手の中にはすでに胸郭出口症候群になっている場合もある。腕のしびれなどの症状がある場合は、胸郭出口のエコー検診も受けるべきだろう。この検査も簡単でスピーディだ。

 整形外科であれば、エコー検診機器は設置されているが、一般的なエコー検診は、高齢者のリウマチによる変形などを調べるために行われることが多い。すべての整形外科医がOCDや胸郭出口症候群の診断が的確にできるわけではないので、スポーツドクターのもとで検診を受けるべきだ。そして「野球肘健診」が、近隣で行われるのであれば、その機会を利用するのがベストだと言えるだろう。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

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