無人のスタンドに響く音と声… 無観客試合で感じるファンの大事さと“球音”への発見
普段は感じることができない打球音、選手たちの声かけ
まず感じたのが、どれだけファンの声援には力があるか、といういうことだ。どれだけいいプレーが起きても、そしてホームランが飛び出しても、湧き上がるのはベンチだけ。球場全体での盛り上がりはない。やはり臨場感というか、緊張感というか、ワクワク感やドキドキ感は醸成されない。ファンが作り出す空気、ファンが持つ力がどれだけ大事かを感じさせられた。
ソフトバンクで先発した東浜は「試合にはしっかり入っていけた。雰囲気は違いましたけど、気にせず投げられました」と語り、工藤公康監督は「感じるところはありました。多少違和感はありますけど、ファンの人の健康を考えれば、致し方ないこと」と話していた。選手たちにとっても、こうした雰囲気の中で開幕に向けて調整していく難しさがあるだろう。大観衆の中でプレーする緊張感がなく、漫然としてしまっても不思議ではないだろう。
その一方で“新鮮さ”を感じたのも事実だ。普段は歓声にかき消されて、なかなか聞くことのできない1球1球のキャッチ音だったり打球音、そして、選手がグラウンド上で発する言葉だったりがしっかりと聞こえてきた。「あぁ、選手はこういう声かけをしていたのか」と感じる”発見”もあった。事態が収束しても、こういったスタジアムでの“音”を楽しめる日があってもいいのではないか、とも思えた。
日本中に影響が拡大し、事態の収束が見えない新型コロナウイルスの感染拡大。オープン戦が無観客開催となったプロ野球も、シーズンの開幕がどうなるか見通せない。一刻も事態の収束を願うばかり。ファンの重要性、そして、選手たちが奏でる音と声の新鮮さを、この事態で感じることになった。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)