データで検証 「負担の大きいポジションを守ると打撃成績が低下する」は本当か?

2019年まで阪神に在籍した鳥谷敬【写真:荒川祐史】
2019年まで阪神に在籍した鳥谷敬【写真:荒川祐史】

遊撃からコンバートされた選手はどのような成績を残した?

 捕手から一塁にコンバートされると打撃に集中できるため成績も向上する――。こういった言説を聞いたことはないでしょうか。一般に、遊撃手や捕手は高い守備力を要求されます。こうしたポジションを守ることは負担が大きく、打者はこの負担から解放されることで打撃成績にはプラスに作用するという考え方です。しかし実際にこういった説に対し、根拠が示されたことはありません。今回はデータからこの説について検証をしてみたいと思います。

 ただ検証をするにも様々な手法が考えられます。ここではまずある年を境にコンバートされた選手が、翌シーズンにどのような成績を残しているかを確認していきます。イラストはある年に遊撃を守った選手がコンバートされ、翌シーズンは別のポジションで多くの打席に立ったパターンをピックアップしたものです。コンバート前後でそれぞれのポジションで50打席以上に立った打者を対象としました。

遊撃手のコンバートによる打撃成績の低下【画像:DELTA】
遊撃手のコンバートによる打撃成績の低下【画像:DELTA】

 例えば、2016年の鳥谷敬(阪神)は遊撃手として451打席に立ち、OPS(※1)で.683を記録。翌年、三塁手として564打席に立ち、OPS.770を残しました。これだけを見れば、遊撃から三塁へのコンバートにより守備負担から解放され、成績が向上したように見えます。

 しかし、ピックアップした8名が全員そうした傾向を示しているわけではありません。松井稼頭央(楽天)は2014年のオフに遊撃から右翼にコンバート。一見負担が軽くなるコンバートに思えますが、14年から15年でOPSは.768から.690まで低下しています。

 結果としては、OPSが上昇した打者と低下した打者は半々です。しかし、コンバート前後でそれぞれ50打席以上の記録のある打者はわずか8人と、サンプル不足の感は否めません。また遊撃からほかのポジションへコンバートされるのは、衰えつつあるベテラン選手に多いという事情もあります。こうした選手は打撃の衰えも始まっているため、成績の変化がコンバートによるものか言い切れません。ほかの手法がないか試してみたいところです。

遊撃と遊撃以外のポジションでの打撃成績は?

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