中日ドラ1・石川昂に“大器の片鱗” メーカー担当者も唸った「1ミリ」へのこだわり
石川昂がこだわるバットへの感覚「1ミリ細くしてほしい」
目の当たりにした関係者が、口をそろえるように言う。「本物だ」。彼らの視線の先には、中日ドラフト1位・石川昂弥内野手の姿があった。2月のキャンプでは左肩腱板炎でつまずいたが、周囲の期待は増すばかり。新人らしからぬ雰囲気をまとった超大物の18歳には、すでに一流たる側面も垣間見える。
「高卒で、ここまで自分の要望を言えるのはすごいです。こんなルーキー、なかなかいない」。そう驚きの声をあげるのは、石川昂が使用する用具メーカー「アシックス」の担当者・岡本哲さん。未来の大砲候補の相棒となるバットについての話だった。
入団前、球界の主砲クラスのバットをいくつか提案し、侍ジャパンの4番でもある広島・鈴木誠也外野手のモデルをベースに製作。太いグリップ部分を0.5ミリ細くして納品した。ところがキャンプ前、左手小指あたりで握るグリップエンドの部分だけさらに1ミリ細くしてほしいと、石川昂から要望があった。「その部分に少し疲れを感じている」と話したといい、1か月続くキャンプに備えてのことだった。
用具に対するこだわりや繊細な感覚は、選手にとって不可欠とも言える素養。プロ野球史上唯一となる3度の3冠王を成し遂げた落合博満氏は、グリップを握って0.1~0.2ミリという薄皮1枚の違いを指摘した――というのは有名な話。石川昂は「感覚は大事っすね。用具にこだわりはあります」と言い切る。新人の多くは既存のモデルで作ったバットをそのまま使うことが多いというが、18歳ながらすでに「オレ流」を存分に出している。
そんな球界の宝に対し、“特別扱い”になるのも仕方ない。「基本的には他の新人と同じ対応のつもりです」と岡本さんは言うが、通常は納品に1か月ほどかかる新バットは2週間で届けた。キャンプ期間中は思うようにバットが振れずに「ウズウズしている」と言っていた背番号2の大器は、3日の教育リーグ・オリックス戦で実戦復帰。一流どころか、超一流である姿を見せる日は、そう遠くないかもしれない。
(小西亮 / Ryo Konishi)