少年野球の罵声は「指導者の能力不足」 野球人口拡大へ求められるコーチ術とは

指導者の罵声はチームを萎縮させる、選手に注意する時は個別に注意を

 少し前まで、野球界には「指導者の言ったことを聞き返さない」という文化があった。選手は指導者の言うことには何事にも即座に「はい」と返事するものだ、とされた時期があった。聞き返すことができないので、選手は指導を十分に理解できていないままにプレーすることが多くなる。そのために指導者の叱責を浴びることが多くなる。こういう悪循環で、「罵声が飛び交う」日本野球の風土が作られたと言える。

 本来、指導者は選手の目線に立って、理解しやすいように説明をしなければならない。「ああしろ」「こうしろ」と命令するだけでは不十分だ。しっかり理解するまで、何度でも根気よく説明をするとともに、選手に気づきを促すような指導をしなければならない。選手が指導の通り動かないのは「指導者の責任だ」ということを指導者が理解すれば「罵声」を浴びせることはなくなるはずだ。

 どうしても選手に注意をする必要がある時は、他の選手のいる場所ではなく、その選手だけに個別に注意をする。子供の目を見て、声を荒げることなく丁寧に説明をするべきだ。また選手に「罵声」を浴びせることで、チームが萎縮する。活躍することよりも「失敗しないこと」「怒られないこと」を考えてプレーするようになる。これも好ましいことではない。失敗を恐れない、子供らしいプレーをさせるためにも「罵声」はやめるべきだ。

 アメリカの少年野球を経験した日本人は「指導者が絶対にネガティブなことを言わない」ことに驚くという。子供がエラーをしても「ナイスファイト!」。凡退しても「惜しい、次は頑張ろう」と励ます。叱責することはまずない。例外的に子供がスポーツマンシップに反した行いをしたときは、指導者は注意をするが、それも個別に、子供の目を見て丁寧に行う。

 ある日本人の母親は、運動が苦手な我が子が、ゴロを転がして出塁した時に、指導者が「やったな! 君はヒーローだ」と大きな声で称賛したのを聞いて思わず涙ぐんだという。日本には「子どもは小さい頃から厳しく育てないと」という考え方がある。しかし「厳しく育てること」と「罵声を浴びせること」は、似て非なるものだ。

 少年野球界は「罵声は指導者の能力不足」ということを再認識すべきだ。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

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