2000本の金字塔見据える中日大島 地獄トレが可能にした34歳でも止まらぬ“成長”
毎オフ社会人時代を過ごした日本生命で行う“大島塾”自主トレの過酷さは有名
フッと笑いながら言う。「まだまだ先なんですけどねぇ」。中日の大島洋平外野手は昨オフから、2000安打への思いを聞かれることが増えた。あと558本。順調にいけば3~4年で到達する可能性がある数字で、今季から3年契約を結んだ背番号8には格好の話題でもある。確かに先は長い。それでも視線は、くっきりと金字塔を捉えているように見える。
ただただ、黙々とシーズン開幕へと準備を進める様が、かえって凄みを感じさせる。2月のキャンプは大半を2軍で過ごしてマイペース調整。オープン戦の開幕に合わせて1軍に上がってきたころ、誰よりも真っ黒に日焼けしていた。「ただ普通にやってただけなんですけど」と頭をかく。体は、一回り以上大きい。「シーズン中の1番軽い時と比べて、10キロくらい重いですかね」とあっけらかんと言った。
意図的でも、調整不足でもない。「自然とでかくなっていたし、開幕のころまでには落ちてきますよ」。一時的な増量は、昨オフで6年目となった“大島塾”に由来する。社会人時代を過ごした日本生命で行う自主トレ。体幹を中心に徹底的に体をいじめ抜く過酷さで有名だが、門を叩く後輩選手は後を絶たない。大島は継続の成果をこう語る。「始めのころは1つ1つのトレーニングに時間がかかってましたが、今は慣れてきてぎゅっと時間を凝縮してできています」。密度高く、効率良く、メニューをこなしていくうちに、体が大きくなっていたという。
そんな“地獄トレ”の成果は、見た目の変化ではなく、強度に現れる。今年で35歳を迎えるベテランの体は、加齢と反比例する。ウエートトレーニングでは、当初スクワットで100キロを挙げるのが精一杯だったというが「今は結構軽くいけますよ。最高だと150キロくらいは上げられますかね」。細身にも見えるしなかやな体躯は年々、進化を遂げている。17年に右足に死球を受けて骨折した以外は長期離脱もなく、昨季は174安打で最多安打のタイトルを獲得。盗塁数も過去10年で2番目に多い「30」を数えた。
快音が止まる要素は、今のところ見当たらない。オープン戦が始まった段階で「あとは微調整ですよ」と笑みを浮かべて言った通り、着実に安打を重ねている。静岡・草薙球場で行われた7日の楽天戦では4打数4安打の固め打ち。7試合で24打数10安打、打率.417(3月10日時点)で、全体的に低調な中日打線の中で圧倒的な存在感を放つ。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて延期されたペナントレースの開幕。竜のリードオフマンが、快音とともにシーズンの幕開けを告げるのが、待ち遠しい。
(小西亮 / Ryo Konishi)