幼少期から際立った意志の強さ 恩師の語る鷹・尾形、土台を作った“研修所”

斧で立木を伐ったり自然に溢れた遊びの中で身体能力を育んだ【写真提供:竹内健二】
斧で立木を伐ったり自然に溢れた遊びの中で身体能力を育んだ【写真提供:竹内健二】

尾形が自然の中で身体を育んだ「愛子硬式野球研修所」とは…

 フィールドは竹内さんの自宅とその周辺の野山だ。青葉区愛子は仙台市中心部から秋保温泉や作並温泉、広瀬川上流に続く、自然豊な地域だ。「愛子硬式野球研修所」に通う子どもたちは斧で立木を伐ったり、薪割りをしたり、木登りをしたり、起伏の激しい1周3.8キロほどの山道を走ったりした。また、竹内さん宅の裏は、40メートルほど下に広瀬川が流れているが、その草木が生い茂る崖を木に巻いたロープで登り下りしたり、対岸の河原を駆けっこしたり。雪が積もればソリ遊びや雪合戦と冬を堪能した。

「岩の裏側に秘密基地を作ったりさ。魚釣りや魚獲りもして、ハヤを釣ったり、ヤツメウナギを獲ったりしたこともあったね。近所から竹をもらって竹馬も作ったり、木の枝で作ったパチンコや吹き矢で木の実を飛ばしたりもしました」

 2010年以降とは思えない自然に溢れた遊び。1949年に群馬県の北軽井沢で生まれ、六里ヶ原(浅間高原)で伸び伸びと育った竹内さんはこの「遊び」の中でこそ野球、スポーツに得られる基礎があると考えていた。

「大切なのは、自分を守るための防衛体力、防衛能力です。自分を守れなければ人も守れない。運動体力は平らなところで安全安心に運動していれば身につくけれど、防衛体力、防衛能力は不定形な野山を駆けずり回らないと身につきません。例えば、木の枝葉が目に入らないよう条件反射的に避け、より安全な通り道をとっさに判断する。後ろに人がいれば、石が崩れないよう危険な情報を伝える。雪合戦は雪玉を投げれば野球の投球、送球のコントロールに、来た雪玉を避けるのは反射神経や動体視力につながります。本来は健康などの用語ですが、これが私の言う防衛能力、防衛体力。これが身につくのは遊びの中でなんです」

 河原でゴツゴツした石の上を走れば、着地石に関する動体視力や捻挫防止の安全性判断力、身体部位の絶妙なボディバランスが身につく。草木が生い茂る40メートルの崖を木に巻いたロープで登り下りすれば、全身の筋力やバランス感覚が鍛えられる。木を伐ることや薪割りも、男子の破壊本能を引き出しながら自然と全身のトレーニングになる。だが、転ばぬ先の杖を与えがちな過保護の現代。見方が変われば、「危険」とも捉えられかねない。

「だから、お母さん方にあえては見せませんでした。冒険というのは親に内緒でやるからワクワクするもの。崖をロープで上り下りするのだって、落ちるような子はいません。子どもは本当に命に関わることはやらない。人間も動物だから本能を持っているんです。本能を出す機会がないと錆び付いてしまいます。子どもたちを野山に放っておくと、それだけで野球が上手になる資質が芽生えると思うのです」

勉強にも手は抜かず、もともと学力も高かった尾形

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